SCENE101
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[左ページ・上左・上右]大ホール/ホール客席:ATS-1361DR特注品 1階 974席、2階 289席、3階 237席 総席数1500席(車いすスペース含む) [下左]客席壁面の一部には、東大阪市の伝統工芸である「河内木綿」の生地が仕上げ材として使われており、木を基調をした内装空間の中でアクセントとなっている。 [下右]ホワイエ/ソファ、ローテーブル、ハイテーブル、もぎり台ベルで両立させるかが最大の課題となりました。市民アンケートにも「クラシックは聴きたいが、演歌や歌舞伎も見たい」など、幅広いジャンルの文化芸術に触れたいという希望が多くあり、この課題をクリアすることが理想の市民ホールの実現につながることを実感しました。そこで建築設計事務所にはホールの形状はもちろん、音響コンサルタント会社とともに、スピーカーの種類、配置、壁の材質に至るまでとことんこだわってもらいました。響き豊かなホールにするという視点で採用したのが、馬蹄形の3層バルコニー構造です。サイドバルコニー席を設けることで、ステージの音がすぐ客席に届く音響的な庇として機能します。さらに演奏者にも自分の演奏の音が素早く届くよう、音響反射板の中に庇を内蔵してもらいました。音の聴こえ方や音の圧力などをコンピュータ上で視覚化してもらい、実際の効果を検証できたことで「豊かな響き」の実現へとつなげることができました。そして、スピーカーから出す音は壁や天井に当てず全て客席にダイレクトに届くよう、指向性の高いスピーカーを採用し、配置をきめ細かく工夫することで、クリアな音を届けることも可能となりました。こうして完成したのが1,500席の大ホールと300席の小ホールです。また、音響とともに強くこだわったのが鑑賞環境です。 特に私自身が鑑賞者として痛感したのが、長時間の鑑賞には「座席の快適性」が欠かせないということでした。そこで実際に巻き尺を持参してさまざまなホールの座席サイズのデータを取り、メーカーからも資料を収集し検討した結果、採用したのが大柄な大人が座っても窮屈に感じることのない、横幅53cmの座席です。クッションも長時間の鑑賞に耐えられる硬さにするため、さまざまなクッションを試して決めました。さらに、座席下に空調の吹き出し口があると腰に冷風が当たることも気になり、これを避ける工夫もお願いしました。ほかにも座面の先端をカットすることで足の可動域を拡げ、立ち上がりがスムーズにできるようにしています。これにより鑑賞者にとって最高に快適な鑑賞環境を実現することができました。10

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