SCENE101
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株式会社佐藤総合計画 関西オフィス設計 プロジェクトリーダー竹馬 聡 氏Chikuma Satoshi市民の自主的な文化創造の場を目指して東大阪市は、文教のまちでもあり、建設予定地の2km圏内に4つの大学があります。近鉄八戸ノ里駅から200mの至近のため、駅前は学生でにぎわう一方、周辺には閑静な住宅もあります。ここに文化芸術の創造拠点を整備するにあたり、大ホールの配置計画が重要と考えました。駅からのアプローチに設けた芝生広場は、人の流れを受け止め、まちと文化創造館をつなぎ、芝生広場に面したロビーやカフェが、まちにうるおいとにぎわいをもたらします。ロビーはホールのホワイエとつながり、創造支援諸室の多彩な活動が感じられます。芝生広場と一体となったロビー空間が、まちと施設、そして市民の文化芸術活動を結び付けます。また、大小2つのホールは並行配置とし、ホワイエが共にロビーに面するとともに、楽屋や搬入口等のホールバックの機能性を高めます。さらに、大ホールのフライタワーは敷地の中央部に配置することで周辺への圧迫感を低減します。この施設配置を実現するため、PFIの事業者選定プロポーザルの提案を作成する段階で、精度の高い大ホール客席の検討を行いました。劇場の設計では平面図と断面図を同時に描いた上で3Dのシミュレーションによる視線の検証を行い[図1]、「優れた音響空間と上質な鑑賞空間」を実現するため、観客に包み込まれ、演者との一体感が生まれる馬蹄形をベースとした大ホールを検討しました。この時点で客席のボリュームを見誤ると、施設の配置計画が成り立たず、提案内容を大幅に見直す必要があるからです。当時スタディした手書きの断面スケッチと完成した施設の断面図を比べると、大ホールのボリュームがほぼ変わっていないことがわかります[図2][図3]。施設整備がスタートすると視線や音響のシミュレーションも重ね、サイドバルコニー席に緩やかな勾配を設けたり、3階席のサイドバルコニーはペアシートとするなど、開設準備室や運営企業の意見も積極的に取り入れて協議・検討しました。小ホールにおいても、市民が主体的に利用しやすく、親しみやすいホールを目指しました。施工段階でも原寸モックアップによる吸音力試験のほか、座り心地、張地や色彩の検証、座席表示プレート等詳細な検証を実施しました。文化創造館の主役は東大阪市民であり、その見どころは今後の市民の芸術文化活動です。多彩な活動と交流がまちに溢れ、『文化芸術のまち東大阪』となることを期待しています。[図2]提案初期段階の断面スケッチ[図3]完成した文化創造館の断面図[図1]コンピュータによる視線シミュレーション12

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