SCENE66
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国際教養大学 理事長・学長(国際社会学者、東京外国語大学元学長)中嶋 嶺雄 氏Mineo Nakajima Ph.D.秋田県公立大学法人国際教養大学多目的ホール、講義棟、図書館設計・監理:仙田満+環境デザイン研究所・コスモス設計共同体INTERVIEWグローバルな教養教育に徹して、世界で自在に活躍できる人材育成を。02SCENE今までにない国際系の大学が、秋田県の念願によって誕生 1980年代のバブル期に、外国の大学の日本校が各地に開校し、ここ秋田県雄和町にも、1990年から2003年までミネソタ州立大学機構秋田校がありました。しかし、バブル崩壊後の不景気や、日本の法律下では大学と認定されなかったこともあって、学生が集まらなくなり経営難で閉校しました。環日本海交流の歴史を持つ秋田県は、産官民が一体となって国際化を進めており、この場所にもう一度、新たに国際系の大学をつくりたいと願っていました。2000年に大学創設に協力してほしいという依頼がありましたが、当時の私は、少子化時代にこれ以上日本に大学を増やす必要はないと考えていましたし、現在の大学のあり方にも疑問を持っていました。ですから、「従来の日本にはない本当にグローバル・スタンダードの大学をつくる」というならお手伝いしましょうと申し上げました。その意向が受け入れられて「国際系大学(仮称)創設準備委員会」が発足し、私が委員長になりました。そして2004年4月に、「大学を新設するなら、常識や慣習に囚われずに思い切ったデザインを描けるように」と全国で一番最初に公立の大学を法人化して、「公立大学法人 国際教養大学」が誕生したのです。世界に通用する外国語教育への使命感が、大学づくりの原点 私は、今の大学の英語教育には大きな問題があると思います。英語できちんと仕事をするにはTOEFL※が600点以上必要で、その水準に達した卒業生は英語を学んだ50~60万人中の1000人ほどしかいません。そのあたりを根本的に変えていかなければ良い人材育成ができないのではという危機感と使命感を持っています。そのような危機感と使命感に後押しされて国際教養大学はスタートしました。その考えが幸いにして大学進学を目指す受験生にも理解され、多くの入学希望者が来てくれたのです。 語学力は、コミュニケーションのツールとして重要です。本学では、全ての授業が英語で行われるため、入学後の半年~1年間に英語集中プログラム(EAP)で英語力を徹底して磨きます。さらに、将来必要となる異文化理解とコミュニケーションのために、「三言語主義」といって、母語、国際語の英語、プラスもう一つの外国語の学習を推奨しています。ひとつの言語を学ぶことは「ひとつの世界が広がる」ことです。より多くの学生たちがその世界を体験し、その喜びが人生にとってすばらしいことだと気づけば、人生は2倍も3倍も活きてきますよ。 キャンパスライフでは、外国の留学生とともに1年間の寮生活をしてもらいます。集団生活を嫌う現代の若者に、人と人の関係づくりや異文化体験をしてほしいので義務化しました。開学当初から留学生を募集し、毎学期100人以上の留学生が学んでいます。9月入学が可能なグローバル・スタンダードのセメスター制を採用し、留学生が来やすいようにしています。当キャンパスでは異文化との出会いは日常的で、関係がうまくいく場合も、ときには摩擦が生じる場合もありますが、そうした経験が異文化理解に役立つのです。※TOEFL(トーフル) : Test of English as a Foreign Languageの略。英語を母語としない人々の英語力を測るテスト。Akita International University「本のコロセウム」をテーマとした半円段状空間。傘型屋根が特徴で、架構には秋田杉を使用。書架の背面は閲覧席になっている。24時間365日開館。国際教養大学図書館

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