SCENE66
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08SCENE 創設以来78年の歴史を持つ岐阜薬科大学(岐阜市立)は、山紫水明な地域にある。遠くは日本書紀に、岐阜が日本での製薬業発祥の地と記されている。そのような好立地において、人と環境にやさしい安心安全な薬学を意味する「グリーンファーマシー」を基本理念として、薬学専門職業人であるとともに豊かな人間性と倫理観を養うヒューマニズム教育を行ってきた。明確な教育目標と高水準の教育・研究により全国から学生を集め、就職率も高い。さらに近年の医療技術高度化や薬学6年制など教育環境の変化に対応するために、また高水準な創薬医療技術情報の教育・研究をめざして、2009年、国立大学法人・岐阜大学医学部の敷地内に新学舎を建設した。新学舎の設計意図や建築表現について、設計監理を行った(株)梓設計の鈴木氏と古山氏に話を伺った。新学舎設計のキーワードは、「つなぐ」こと 岐阜薬科大学の新学舎が、岐阜大学の敷地内に建つ意義や大学づくりの可能性はどうなのか、という問いかけから設計はスタートしました。そして、岐阜薬科大学の枠を超えた新学舎づくりを目指して「つなぐ」というキーワードを導き出したのです。「施設と施設をつなぐ」「地域とつなぐ」「人と人をつなぐ」「地球・環境とつなぐ」ことであり、大学のコンセプトは「知的財産を育み、継承する場を未来へつなぐ」としました。 この「つなぐ」というコンセプトを基に、2つの設計テーマを設定しました。一つ目は、国立大学法人の敷地内に建ち、岐阜大学医学部と岐阜薬科大学が連携して進める情報・研究の拠点づくりを建築的にどう解釈するか、二つ目は、大学の理念「グリーンファーマシー」をどう表現するかです。 一つ目の拠点づくりについては、岐阜大学医学部の敷地を見ると、他学部がある東側の「学のゾーン」と、企業との共同研究が想定される西側の「産のゾーン」を結ぶ結節点には、医学部の研究棟や実験棟そして大学病院があって「医療ゾーン」を形成しています。そこを拠点とするために、医療ゾーンの施設群全体を「水と緑の歩廊」でつなぎ、両大学の一体感をつくりました。さらに南北方向の「連携ブリッジ」により各施設を同軸でつなぎ、岐阜薬科大学新学舎を拠点の南玄関にするというキャンパスイメージを想定したのです。計画のシンボルであるブリッジから、キャンパスネットワークが地域へと拡がることを望みました。「つなぐ」と、コミュニケーションが生まれる 人や薬品への安全性、災害時の医学部や大学病院との円滑な連携などを考慮して、拠点内全ての建物を連携ブリッジによって2階レベルでつないでいます。 ブリッジには「かけはし」というシンボル的な意味合いもあります。物理的につなぐだけでなく目に見えないものを「つなぐ」ことで、様々な方向に発展してコミュニケーションが生まれます。知的財産も、知識をただ詰め込むのではなく、他の学生とともに勉強するなかで受け継いでいくことに意味があると思います。だから学生や先生のコミュニケーションが大事になってくるんです。例えば各研究室は全く異なる研究をしていますが、その縦糸に、対話や情報交換といった横糸を通せば、研究に新しい展開が生じます。また対話により治療が進められるので、そういった能力が医療・薬学を修める学生には重要であり、日常的にコミュニケーションを誘発する施設づくりをしました。大学の基本理念を表現した「グリーンハーバルガーデン」 二つ目のテーマ、岐阜薬科大学の基本理念である「グリーンファーマシー」についてですが、薬学や医学は、人が人に対して行う行為で、本来は人間や環境にやさしいものだと思います。これを表現するために、建物の外観は、素焼き風のタイルを使ってやさしい表情を持たせました。そして生薬である薬草をテーマにした薬草園「グリーンハーバルガーデン(中庭)」をつくり、さらに外構も含めて敷地全体を薬草・薬木の植栽としました。また植栽も、岐阜薬科大学の専門の先生と相談するなど徹底して取り組みました。連携ブリッジ人と環境にやさしい薬学を、「つなぐ」施設づくりで表現。株式会社 梓設計設計室 第1統轄部 副主幹鈴木 教久 氏(写真右) 設計室 第1統轄部古山 博章 氏(写真左)INTERVIEW南西側外観N「学」のゾーンへの展開「産」のゾーンへの発展岐阜大学との連携地域との連携水と緑の広場記念会館複合施設棟新学舎総合研究実験棟医学部研究棟折立・大学北線情報・研究の拠点情報・研究の拠点医療ゾーン連携ブリッジ病棟・診療棟東海環状自動車道岐阜市街地方面岐阜IC(予定)方面金華山岐阜大学キャンパス(工学部等)御望山岐阜大学医学部ゾーン南側玄関薬科大学附属薬局岐阜薬科大学新学舎水辺の歩廊水と緑の歩廊交流ゾーン駐車ゾーン岐阜大学医学部ゾーン

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