SCENE67
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02SCENE 哲学の欠如から起きた“携帯産業のガラパゴス化” 私は哲学的な立場から情報通信を捉えています。まず「この携帯は、なぜここにあるのか?」と問うてみてください。携帯ひとつをとっても、文化的・社会的・技術的な歴史、そして世界との関係のなかに在るのです。そういう哲学がないから、世界市場と協調できず、問題になった“日本の携帯産業のガラパゴス化※”が起きてしまったのです。携帯は本来、個人が他人と意思疎通するためにあるのに、ゲームなどの機能が哲学もなく膨らんでいくと、問題が生じてきます。これからは長く使うためのエコシステムが重要なのに、ちょっと壊れただけで買い換えさせます。ただ儲かればいいという風潮になっていますから、これを本気になって変えていかないといけません。だから情報技術は、テクノロジーではなく、デザイニングやエンジニアリングに近い考え方をすべきだと思います。 本質を見る目・自律性・ソフトスキルが、新学部のキーワード 当大学の工学部内には、情報工学科とコンピュテーショナル学科が2年半後までありますが、その募集時には、理工系離れ特に情報系の不人気もあって、志願者が減っていました。そこで、ユビキタス・コンピューティング・ネットワーク時代の社会・経済活動のインフラに役立つ人材を育成する学部新設が提起されたと聞いています。教育理念は、まず、本質を見る目を養うこと。次は、自律的に自分から動くことを大学生活で習慣化すること。自律する自信を持つには、専門の教育が必要になります。最後は、グループで活動するためのソフトスキルを身に付けることです。 ソフトスキルとは、人間の感知能力です。感知し、咀嚼し、その上で自分なりの表現をすることが重要となります。言葉や文章だけではなく、顔色を見る、手を触ってみる…。話やプレゼンテーションが下手でも、アイコンタクトが上手なら、それでもいいのです。グループの中で、相手を理解して自分の考えを適切に表現し伝えるには、こういったソフトスキルが欠かせません。お互いに信頼し合うことでソフトスキルは成り立つのに、日本では、現在、他人を信頼する人の割合が低いと言われていますね。 大学では講義や活動をできるだけグループですることを勧めています。オープンマインドで学生と先生とそして職員が学び教え合い、活性化させることが大事だと思いますから。学部長室には円形にテーブルを置いて、皆さんが自由に来て話し合えるようにしています。※日本の携帯産業は先進的だが、国内で独自進化をしている間に、世界の標準化や価格競争から取り残された、と野村総研などから問題提起があった。例えば国内標準の3Gインフラは、海外では通用しない。今後は日本の携帯産業に、モノの先にあるサービスやエコシステム、世界に通用する通信インフラの品質の確保や、情報セキュリティ問題への対処が求められる。総合情報学部長大場 善次郎 氏INTERVIEW

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