SCENE68
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03SCENE デジタルイメージで統一された意匠は 周りの環境との調和を重視 こうして建設された新1号館は、最先端の教育機能を持つ高層棟と、学生がくつろげる交流・支援機能を持つ低層棟が、使いやすくシンプルに構成されています。建物への誘導面では、高層棟はキャンパスへのアプローチから、低層棟はアベニューからの視線を意識した断面構成にしました。 外観については、高層棟には情報科学部が主に使用する学習機能があることから、デジタルなイメージを表現するため、ファサードのカーテンウォールにシェルフをランダムに取り付けました。日射光によるシェルフの影が刻一刻と変わっていきますが、これは“情報は変化する”ということから発想しています。建物の高さは、後方の既存建築とほぼ合わせてあります。一方、低層棟はアベニューに面しているので、圧迫感が無いように透明感を持たせ、周りの木々の高さと調和するよう配慮しました。さらに、エントランス上に張り出した大庇の支柱は、これらの樹林をイメージした意匠としています。 インテリアについては、高層棟は学習空間なので基本的にプレーンで均質ですが、学生が食事や休憩をする交流空間には、質感や素材感のある仕上材を使いライティングや採光にも気を配って、雰囲気をプラスしています。またデザインのモチーフとして、天井の照明、床のタイル、扉のスリットの形やドアハンドルまで、デジタルなイメージで統一しました。 新1号館の工事中に、建築学科の学生たちに実学講義をする機会があり、講義後に現場を見せて説明をしました。設計が現場にどう実現されたかを、体験として分かってもらえたのではないでしょうか。 環境への配慮として、太陽光発電は基礎工事済みで、時期が来たらいつでも利用できるようにしてあります。ファサードのシェルフは、ガラス面の日射光負荷を45%ほど低減しています。空調については、低層棟を居住域空調にして省エネに配慮しています。またサスティナビリティへの配慮として、将来の学部再編や学生数増による改修などにも対応できるように、東西33m、南北15.5mの大スパンの無柱空間を確保しました。 半屋外で透明な空間を駆使して 学生が参加したくなる環境づくりを 八草キャンパスを見た時に、中と外の間の空間である半屋外が少ないと感じたので、新1号館にはこうした空間をできるだけ多くつくりたいと思いました。アベニューからつながる低層部の1階に、半屋外のピロティーを設けました。ここは、全国の大学の土木系学科による橋梁模型を使ったコンテストをするなど、イベントにも利用され始めています。 中と外の隔たりをなくして透明感を上げれば、アベニューから見た時に、中で何をやっているかが分かります。そうすると、学生は行われていることに参加してみようという気になります。こうしたことが次々に連鎖していき、キャンパスが活性化されることをねらっています。また、授業が終わったら気軽に寄り道ができる、街なかにあるようなスペースがキャンパス内にあるといいですね。 学生のライフシーンに合わせて 様々なラウンジを用意 大学の要望のひとつである、学生のラウンジスペースの確保については、学生からもアンケートを取って、必要数が計400席と決められました。郊外に位置する八草キャンパスは、都心からのアクセス条件があり、大学もその点は感じておられると思います。そういった環境だからこそ、街なかの商業施設のような雰囲気がある場所をつくりたいと考えました。広いスペースに、ただ400席を収めるわけにはいかないので、「今日は静かに過ごしたいからここ」「明日は…」などシーンを想定して5つのラウンジを、低層棟の1~2階に用意しました。 1階にある2つのラウンジの床は屋外仕様のタイルにして、外部空間からつながる明るく活動的な多少ザワザワとしてもよい場とし、2階へつながる大階段からは木を使用して、静かでしっとりとしたインテリアへと場面展開を図っています。1階には3つのラウンジがあり、そのひとつはカフェです。大階段の前のラウンジは、くつろぐことはもちろん、イベントや講義もできるスペースとしました。壁面のサービスウォールの中にはスクリーンが仕込まれ、映像を観ることができますし、パフォーマンスをする場合には大階段は観客席になります。階段は、単に上下階をつなぐだけでなく、こうしたスペース利用のアイデアを広げることもできます。2階には2つのラウンジがあり、そのひとつには、大学では珍しい毛足の長いカーペットを敷いてホテルのラウンジ風のしつらえにしました。123愛知県愛知工業大学八草キャンパス 新1号館AICHI INSTITUTE OFTECHNOLOGYYAKUSA CAMPUS

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