SCENE69
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03SCENE「現場主義教育」は、新たな教育の機軸新・現場主義教育 1 ありのままの親子に接して、社会人力を養う 短大は、2010年に月照館内に「子育て支援室」を設置して、親子支援を中心に地域と協働で企画・運営を始めました。現在は、2001年から活動してきたエクステンションセンターを「地域連携室」と名称変更し、2011年から場所を月照館内に移し、子育て支援や公開講座等に即対応できる体制に移行しました。子育て支援室では、授業や実習等で忙しい幼児教育学科の学生が、支援室を訪れる親子と触れ合うことができます。“親の観察ができる”ことは、主に子どもを対象とする幼稚園・保育園の実習とは大きく違います。ここでは、親の子どもへの接し方や言葉使い、親の悩みなど、お母さんたちの生の姿が見られます。学生は、こうした現場体験をすることで、今までと違う面の成長をするのです。現在は月曜~金曜までの5日間、10時~17時まで、多くの親子が、時には祖父母まで三世代が利用しています。また同じ階にある給食管理実習室では、学生が幼児向きの食事を作ることができますので、衛生上の問題などがクリアされ、いずれは、来館する親子に提供できればいいなと考えています。 短大と大学が、それぞれの特徴を生かしつつ、近年急速に進展した、地域や行政との連携を深めていきたいですね。こうした現場での実践における“五感を使ったフィールドワーク”は、学生の社会人としての基礎力やコミュニケーションを養う大切な教育の場であると思います。新・現場主義教育 2 地域から学び学究へ活かす 2007年、大学の取り組み「現場主義教育充実のための教育実践~フィールドワーク教育~」が特色GPに採択されました。それを推進するために、窓口として「フィールドリサーチオフィス」を設置し、地域と大学の交流拠点であるサテライトキャンパスの運営・管理をしてきました。サテライトキャンパスは宇治市と京都市の商店街に3ヵ所設けられています。学生たちは協働で、商店と市場調査やマーケティング、商品開発、販売を行ったり、旅行会社と修学旅行の高校生の体験学習支援をするなどしています。またオフィスの職員に鵜匠をしている女性を採用し、観光面でも地域との連携を進めています。こういった成果は文化人類学科のカリキュラムに反映され、2008年に採択された教育GP「文化コーディネーター養成プログラム~モノ・ひと・地域を活かす大学ミュージアム~」に繋がりました。新・現場主義教育 3 継続し実績を残すことで、社会的認知を得る 地域との連携協力事業は、継続し実績を残して社会から認知されることが大事だと思います。そのためには財政基盤も重要です。宇治市の委託事業である子育て支援室は、今年、NPO法人としての組織化を予定しています。また、京都府から2010年に受託した「ワーク・ライフ・バランス※地域推進事業」は、子育て支援とも密接な関係があり、子育て世代などの調査・提案・実践によるモデル事業として進めています。今年中に地域の方と学外に、親も子どもも便利に安心して利用できる「親子カフェ」を開設して、この事業の拠点にしたいと考えています。4つ目のサテライトキャンパスに位置付けできるといいですね。基本姿勢は不変、環境づくりは不断今後も、社会の求めに応えると同時に、独自性を重視した人材育成を 短大の社会的な使命について、次の2点を同時に実践していくことが重要だと考えています。1番目は、現代の社会からの求めに応じた人材育成。2番目は、本学の独自性を重視した人材育成。この考え方の是非は、短大の就職決定率がいつも95%を超えることで実証されているのではないでしょうか。 使命の2番目については、2010年から短大で、建学の精神の具現化の一環として「自校を学ぶ」の開講と授業開始前の「黙想」を実施しています。必修科目「自校史を学ぶ」は、仏教系学園として大事な建学の精神を、学生と先生の双方に涵養することを目的としています。全ての先生が後期半年間、自分の授業のなかで自身の言葉にして学生に伝えます。本学の3大教育理念は「謙虚」「誠実」「親切」ですが、例えば食物栄養学科では、「生きものの、いのちをいただくという謙虚さ」を教えることもできるでしょうね。学長も「自校史を学ぶ」講座を受け持っています。仏教では “気づき”の精神が大事だと考えていますので、フィールドワークは、「キャンパス内で気づいたことやものを、写真と100字文で学長のパソコンへ送ること」にしています。また「黙想」は、スタイルは自由で30~60秒間だけ無言の時間をもつというものです。これからのキャンパス整備は、施設や組織づくり、そして人的な環境づくり そのほか、キャンパス内の施設整備としては、短大・大学・大学院と3つに分散する図書館の統合が、重要な仕事として残っています。それぞれ専門性はありますが、情報の関連性や重複を考えると、図書情報センターとして集約した方がよいと考えています。そうすれば学生や先生には使いやすいですし、集約することで管理の余裕ができれば、開館時間を長くして地域の方にも利用していただけます。 これは夢になるかもしれませんが、近鉄の向島駅から宇治キャンパスまでのキャンパスロード「街と大学を結ぶアーケード」ができたら、地域ともっと近くなるのではと思っています。 また、「どの先生も学生の相談を気持ちよく受けることができる」「どの職員に聞いても行きたい場所をきちんと教えてくれる」といった“当たり前のことを当たり前にできる”ような教職員の意識改革を、もっと進めていきたいですね。施設や組織づくりはもちろん重要ですが、“人的な環境づくり”も大事なことであると考えています。※ワーク・ライフ・バランス:仕事と生活の調和と訳され、男性も女性もやりがいを持って仕事をすると同時に、充実した家庭生活を人生の各段階に応じて実現するという取り組み子育て支援室

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