SCENE70
17/28

実学重視の伝統がある当大学では、実習室をよく使います。当大学には多くの研究室があるので、2~3の研究室で1つの実習室を使い回しできるよう、隣に準備室を併置して各研究室が使う実験機具などを収納する棚を設けました。 特色を出したかったマグネットスペースでは、単体でも組み合わせでも使える台形テーブルを特注しています。イスは基本的に、ポイントにグリーンを配したシンプルなタイプですが、1脚だけゆったりできる応接タイプにしました。いろいろなサンプルを用意して決めましたが、学生や先生でいつも満員だそうです。ここの家具の使い方は、各階を利用する人たちが創り出していくことになるのではないでしょうか。■軽やかで明るい、エコ体育館 アリーナのコンセプトは「光と風を取り込む」ことです。建築的には、西壁と大きな屋根および庇がつくる逆L字形のシルエットを、3面のガラス壁が支える浮遊感をねらいました。西壁は隣接する馬場の砂塵や夕日からアリーナを守り、庇は夏の直射日光を遮ります。東・南・北のガラス壁は昼光を取り入れて照明無しでも明るい室内を実現しました。さらに、クールピットや外気との風圧差を利用した自動通風窓を設けて、空調負荷を軽減しています。また、アリーナの屋根架構に張弦梁構造を採用して薄くし、大空間を軽やかに見せるようにしました。 バスケットボールコートが2面使え、式典では1700人が収容できる広さを有しています。JR線の矢部駅にも近いので、今後は外部の利用も増えてくるのではないでしょうか。麻布大学 生命・環境科学部棟╱麻布獣医学園アリーナ■場づくりの鍵は、メリハリのある建築計画 大学、設計、施工の担当者がよく話し合い、共につくり上げた施設だったこともあり、基本的には設計意図が実現できたと思います。学生と先生のみならず、その背後にある大学の戦略や保護者など様々な目線を意識しながら、入学希望者を呼べるキャンパスづくりをすることの必要性を感じました。 現代の大学施設づくりでは、効率が重視され、無駄なスペースが排除される傾向にあります。しかし教育とはコミュニケーションそのものであり、それを促す空間こそが教育施設づくりではないでしょうか。効率的に共有化・集約化をしてフリーなスペースを引き出し、そこに特色あるコミュニケーション空間を創るという、メリハリのある大学施設づくりをしていきたいと考えています。麻布獣医学園アリーナアリーナ/折りたたみイス、ステージ下台車ステップ(特注品)、演台、花台、司会者台写真提供:麻布大学マグネットスペース/特注テーブル、ラウンジチェア1人掛けソファ、ロッカーサインは、抜いて透かすことで軽いデザインに。16SCENE

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です