SCENE70
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02SCENE地球環境に配慮した低炭素エコキャンパス研究対象でもあるエコ建築には大学の最先端工学技術を集結。 低炭素エコ建築を実現するには、特に空調と照明の負荷を小さくすることがポイントになります。 まず、外観デザインを特徴付けている垂直方向の外壁フィンと水平方向の庇で空調負荷を低減しました。フィンは朝夕の低い日差しをカットし、庇は夏の日差しを遮ります。また、自然換気システムを導入しました。建物をロの字型とし中庭を設けて、外周部の窓から中庭に抜ける空気の流れを利用したり、風や雨を感じて自動開閉する窓を備えたりしています。さらに、アースチューブも導入しており、空調を止めた夏場のエントランスホールに、地中で冷やされた外気を送り込んでいます。 全館にLED照明を設置しており、この規模で実施しているのは国立大学法人では名古屋大学が初めてです。LED照明は、低消費電力で長寿命、さらに制御システムとの相性もよいので、省エネ効果とCO2削減が期待できます。また最近の建物は明るすぎると言われていますので、ES総合館では、照度をやや抑えています。省エネ効果だけでなく、明るさや照明効果に対する、人の感じ方や利用状況も調査中です。 こうした最先端の省エネ建築物をつくった目的は、建築系の研究室にとって空調や照明などの実証研究の対象となること、学生にとっては体験的に学べることであり、彼らのモチベーションもアップすると考えています。キャンパスマスタープランの重点に位置するES総合館。 東山キャンパスは、市内東部丘陵地の緑多い広大な敷地にあり、キャンパスの中央を南北に幹線道路が走っています。ES総合館は、マスタープランで「地域交流ゾーン」とされているこの通りの界隈と、キャンパスを東西に貫く新しい交流軸「ノーベル賞通り(仮称)」の交点に位置しています。地下鉄の名古屋大学駅に近いこともあり、大学は、この場所を計画当初から重視していました。 ここは旧工学部4号館の跡地で、建て替えの計画がありました。同じ頃に、益川敏英先生と小林誠先生という2人のノーベル物理学賞受賞者を輩出した理学系の素粒子宇宙起源研究機構が新設されました。その施設計画があり、当初は別々に建てる予定でした。しかし全学的な見地から、理工両研究科と全学が協力して1つの建物をつくることにしたのです。一方、名古屋大学では新設や大規模改修時には、建物の20%を全学で共用できる施設にするというルールがあり、この建物もそれに従っています。多目的ホール(ESホール)、会議室、レストランなどは、全学的に使う方針で設置し、戦略拠点としました。 そして、ほぼ同時期に立案していたキャンパスマスタープラン2010のコンセプトを、ES総合館で実現することに決まったのです。「地球環境に配慮した低炭素エコキャンパス」は、エコ建築という、見て分かる形に表現し、「グローバル&ローカルに多様な連携を支援する」場として、ESホール・会議室・レストランなどを設置し、「自由闊達な教育研究風土の基盤となる」場として、ノーベル賞級の素粒子宇宙起源研究や、最先端工学技術の教育研究が行える施設を設けました。ファシリティマネジメントの見地からも十分検討されています。名古屋大学工学部施設整備推進室/講師恒川 和久氏INTERVIEWCONCEPT南面外観 ノーベル賞展示室もある低層部には公共性が高い機能を。圧迫感低減のためセットバックした高層部には研究機能を配置。吹き抜けと中庭テラス外周部から中庭へ抜ける空気の流れによって自然換気。

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