SCENE71
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03SCENE※クォードラングル:回廊や建築物で囲まれた中庭で、交流のための場。※ロッジア:ファサードに面して配された回廊状の空間。 一方で、このキャンパスの西側に新キャンパスおよび地下鉄の新駅ができる予定があり、将来はセンタースクエアの地区がキャンパスモールとして表玄関になると予測されます。同時にモールの中心施設整備も計画され、学生の居場所となる食堂や生協などの厚生施設が建設されることになりました。 さらに、学会などが開ける講堂や、工学部の決定機関である教授会や事務局の施設も入ることになり、多様な機能を併せ持つ中央棟の計画が出来上がっていったのです。センタースクエアをどう捉え、どのような提案をされたのでしょうか?堀 建設予定地を下見に行ったのですが、青葉山という丘陵地には尾根沿いの環境が残り、アカマツの疎林があちこちにあったのですね。それを見て昔の尾根の雰囲気を再生しようと考え、どういう建築がそれに一番合うかという視点から、構想をスタートさせました。尾根ですから北側と南側の植生に違いがあり、両方とも生かせるように計画を進めました。地引 他に重視したことが、居ながらの建て替えです。以前あった食堂棟では、食堂と販売・書籍コーナーがほぼ半々のスペースを取っていました。最初にブックカフェ棟を作り、販売と書籍を移動した後に半分を壊しました。残った食堂を使いながら、その横に中央棟を建設したのです。センタースクエアプロジェクトによる調査や意見は、建築に反映されましたか?地引 要項には、中央棟の食堂の広さや席数など以外に、あまり細かい規定はありませんでした。お茶を楽しみながら本が読めるブックカフェは、国内にはあまり例が無く、国立大学系では初めての試みでした。小野田先生がアメリカ滞在中にご覧になったイェール大学のブックカフェが、スマートな印象として残っておられたようです。 工学研究科の学生からは、授業をうける場所はあるが、授業の終了後に自習したりくつろいだりする場がないので困るという声が。また先生からは、お客さんが来ても居てもらう場がなく、研究をする立場として良くないという声があり、それらも併せて実現することになりました。堀 周りの建物との関係づくりに、クォードラングル※という場を設けました。センタースクエアとその南側にある同窓会館、そして、いずれ医工学研究科棟になる西側の事務棟に囲まれた、アカマツと芝生のある季節が感じられる場です。また中央棟はキャンパスの中心に位置し、工学研究科のほとんどの学生と先生が集まってきますので、入りやすいよう南北面を開放しています。居場所としての、建築や家具デザインの基本的な考え方は?堀 構造的には東西の両端に、大講義室と大会議室という閉じた空間を設け、そこに耐震など構造的な要素を集約しています。中央部は、スレンダーなPC柱列で支えられている、開いた2層吹き抜けの大空間を創出しました。ここには、「あおば食堂」をはじめ3つの食堂やフードコート、クイックコーナーなどが入っています。全体で600席確保したいという大学の要望に対して、569席を確保しました。北側の広場に面して2層吹き抜けのロッジア※を設け、学生たちの移動による空間の活性化をねらいました。藤江 建築プランが練られている間に、私たちは先ず、工学系の学生や先生たちが過ごす日頃のシーンについて考えていました。研究は昼夜を問わず続けられているので、例えば夜中に、学生や先生たちが研究の合間にここへ来た時、どのようにくつろげるといいだろうか、朝日をうけて過ごす時間はどうあったらいいだろうか…と。また東北大学ともなれば、海外からのお客様も多いと思われます。そういった方たちにどのような印象を持ってもらえるといいかなど、様々なシーンを想定したイメージづくりにずいぶん時間を割きました。中央棟の設計が具体的になっていく間に、家具のありかたも具体的になっていきました。こうして実現化していく際に、建築空間との関係や周辺環境との関係など、イメージづくりの間に考えた当初のきっかけが、形を変えて生きてくるんですね。具体的には、どのような居場所が創り出されたのですか?野崎 私たちは、長い食堂空間の途中に拠点をひとつ作りたいと考え、ダイニング「DOCK」を提案しました。DOCKは多様な使い方ができ、カーテンで部屋を仕切れば小さな会が催せますし、開ければ外と一体化した使い方も可能です。 また、学生にもっと開放するよう大学に働きかけました。例えば金曜日の夜はパーティーなど自由に使わせるとか…。地引 建築的にも、あおば食堂の開放感ある空間に対して、DOCKは天井部分を抑えて落ち着きのある空間にするなど、家具計画に合わせた配慮をしています。建築と家具が協働して創り出した、気持ちよい居場所。青葉山東キャンパス尾根の自然に呼応した大学生活の核となる居場所づくり。 N尾根センタースクエア地下鉄駅(予定)新キャンパス(計画)ブックカフェ棟中央棟クォードラングルTOHOKU UNIVERSITY AOBAYAMA EAST CAMPUS CENTER SQUARE

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