SCENE71
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05SCENE藤江 この建物内で一番大事な食堂空間を、賑わう昼食時だけでなく、交流、勉強、くつろぎなど様々な用途に一日中使ってほしいので、居方のちがういくつもの場づくりをしています。また、人の活動を促進する「動かせる家具」と、人の動きを制御する「動かせない家具」を家具配置計画の骨格としました。動く家具を自由に組み替えることで新しい活動が生まれますよね。 例えばフードコートとあおば食堂の間にある長さ8m超の大テーブルやロッジアに添って柱を縫うようにあるクイックカウンターは、動かない家具です。家具には、どっしりとした不動の安心感も必要で、東北の地元材を大らかに使っています。また、建築専攻の学生もいますから、本物の材料を特質が伝わるような方法で体験させることも大事です。ホワイトアッシュやカラマツなど無垢の木材を使用していますが、素地仕上げにしてその感触が分かるようにしました。 一方、あおば食堂の家具は大きさも形も様々な動く家具で、人数や用途によって自由にレイアウトを変えられます。家具のしつらえは、シンプルで機能的にしました。地引 2階の回廊から見下ろすあおば食堂の様子はおもしろいですよ。学生達は家具を自由に動かして使っています。堀 ここは、春から秋にかけては、とても気持ちのいい場所ですから、環境を含めた建築計画が生きてきます。中央棟やブックカフェのテラス、クォードラングルなど半屋外空間が活用されることを期待したいですね。藤江 私たちも、様々な規模のパーティーが催せるような、室内と一体使用ができる半屋外空間を作ってほしいと、建築へ度々お願いしました。南側テラスへの開口部も増やしていただき、それに合わせて家具配置も調整しています。地引 プロポーザル時から提案していましたが、片持ち梁下のピロティー空間やテラスなどの半屋外空間を積極的に設けました。あおば食堂とDOCKの間仕切りには建築的な仕掛けがしてあり、通常は開いていますが、用途に合わせて空間が仕切れるようになっています。藤江 また、広い面積を占める床の色と素材は、建築にも家具にも重要です。ここで過ごした学生は、この特徴的な床を記憶に刻んでずっと覚えていてくれるのではないでしょうか。地引 床は、食事とくつろぎの場にふさわしい赤系の暖かい色が良いのではないかと考えました。材質は、コンクリートに色粉と骨材を入れて打ち、現場で研ぎ出したもので、現場研ぎ出しテラゾーと呼ばれており、ほとんど目地が無く、タフで素材感があります。堀 他に、「溜まりの空間」として、中空に浮いたようなカフェを2階南側の回廊に設けました。対称的に、反対側にある2階北側の回廊は「通過する空間」です。キャンパスでは、人の動きが活性化につながりますからね。藤江 「溜まりの空間」のポイントは、手すりも家具も透明なことで、空間を楽しみ時間を過ごす人々の生きている仕草や様が浮きでてみえてくるんですよ。堀 こうして中央棟が出来上がった矢先に、東日本大震災が起きてしまいました。しかし、この建物や家具は無事で、キャンパス内の避難所として使われていたようです。大学の評価はこれからですが、施設として信頼していただけたのではないかと思います。地引 大学キャンパスにおいて本当に創造的な研究をするには、街のような遊びの場や溜まりの場も必要となるのではないでしょうか。藤江 人間の日常は単純ではなく重層的ですから、建物にも様々な居場所が必要です。大学が私たちの考えを理解し受け入れて下さったから実現したのですね。そして震災時には、多くの学生や教職員が身を寄せ合い「みんなのいえ」として機能したと知り、本当に良かったと思っています。TOHOKU UNIVERSITY AOBAYAMA EAST CAMPUS CENTER SQUARE尾根の自然に呼応した大学生活の核となる居場所づくり。 あおば食堂/特注テーブル、輸入イスピロティー:室内と一体使用できる片持ち梁下の空間。大テーブル/特注テーブル・イスクイックカウンター

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