SCENE72
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アクティブラーニングとは、どのような授業? 学生の能動性を発揮させる授業・アクティブラーニングは、前期課程(1・2年生)の学生が大学で学ぶ上で必要な基礎的技術「アカデミックスキル」を効果的に身につけるために、グループで協働して行う教育方法です。 駒場アクティブラーニングスタジオ「KALS」では、「基礎演習」「生命科学」や「物理科学」「英語」「全学ゼミナール」などの授業を行っています。「基礎演習」は、課題設定から調査・執筆、発表までの基礎的技法について学びます。 「生命科学」や「物理科学」は、基礎的な原理が確実に理解できるよう、講義のみとは違う講義と実験の往復という形式の授業を実験的に行っています。例えば、自分の唾液からDNAを抽出する実験の後で、PCを使ったDNAのシミュレーション画像を見ながら各々の考えを発表しディスカッションをします。自ら実験し、結果について話し合うことで、原理の理解度が確実に上がります。 「英語」は、会話などコミュニケーションが重視されるので、アクティブラーニング向きです。例えば授業の疑問点について、学生同士で英語によるディスカッションを行ってから各自が英語の文書にまとめれば、最初から文書にまとめるよりも授業の理解度が増します。また理科生(理科系学生)は、科学者として必須のコミュニケーション能力を身につけるためにALESS※を履修します。理系の学術論文は英語で作成・発表されるからです。 「全学ゼミナール」は、自由研究と体験の部門がある少人数授業です。担当教員の興味をテーマとしており、最近では「駒場で食を考える」「平和のために東大生ができること」などが開講されました。資料探しのために、1人1台のネットワーク端末を持つ環境が必要です。最新・教育事情アクティブラーニング第 2 回 授業は、ディスカッション、プレゼンテーション、実験、Web教材などを講義と組み合わせて行います。英語では、タブレットPCを使ってライティングのピアレビュー※(相互批評)をします。教員が学生の作文をスクリーン上で添削することもありますが、目的は個人的な修正ではなく、間違いの共有です。間違いをしやすい箇所は学生全員に共通していますから。また、ピアレビューは、教員とは違う学生同士の目線で批評し合うので、自分の考えや趣旨を保ちつつブラッシュアップできる学生主体の方法なのです。 プレゼンテーションについては、まず6人ほどのグループでミニ発表を行います。お互いの顔が見えるので、発表する側も聞く側も責任が伴います。それを重ねていき、最後に皆の前で発表をすると、成果が全く違ってきます。 アクティブラーニングでは、教員が“学生が手や頭を使って能動的に動く”授業づくりをすることが大切だと思います。また、授業や実験などのワークをする際には、協働学習が適しています。 提案書の作成や発表ではパワーポイントがよく使われますが、手書きして掲示発表できるホワイトボードも重視しています。限られたスペース内に主旨をまとめるスキルが磨け、また、学生たちが話し合いながら書き込めるので協働学習向きです。 教員がリアルタイムに学生の授業理解度を確認するため、授業中に小型無線端末による匿名の学生投票を実施しています。結果をスクリーンに映し出して、理解度が低ければその場で説明を補足します。 アクティブラーニングは、講義とは違ってグループ学習ですから、教員が見回りやすく声もかけやすいです。教員と学生の人間関係がより築きやすくなり、各学生の良いところが把握できます。特任准教授 岡田 晃枝氏(右)特任助教林 一雅氏(左)東京大学 教養学部附属教養教育高度化機構全体でプレゼンテーショングループでプレゼンテーション小型無線端末で授業理解度を確認■ アカデミックスキルが身につく、 多様でアクティブな授業。■ 学生が主体となって、 相互批判的に行われる授業。■ 学生の協働学習を、教員が心と技でサポート。※次号の最終回は、アクティブラーニングの学習空間やICT環境がどうつくられているかを紹介します。※ピアレビュー:Peer Review。Peerは仲間の意。研究者仲間で研究内容を批評し合う。※ALESS:Active Learning of English for Science Studentsの略。東京大学で理科系学生が 受講する英語による必修授業。まずテーマを設定して科学実験を行い、それをもとに論文を執筆。 その論文について学生同士が批評し合って精度を高め、最後の論文執筆を行う。11SCENE

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