SCENE73
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新しい文化会館は、JR信越本線の柏崎駅北側にあった日本石油の工場跡地で再開発計画地区の一角に建っています。駅の周辺には商業施設が多く、当会館は、街の中核施設として公園と一体化した形でつくられました。 設計プロポーザルの要件は、「市民に設備が整った創作活動の場を提供し、鑑賞機会の充実や人材育成および創作活動の支援をする」「誰もが気軽に利用でき、交流やにぎわいを創出する場にする」「中越沖地震からの復興を象徴する柏崎市の新しい顔として、市民に愛され誇りに思われる施設にする」ということでした。 私たちは、市民の交流やにぎわいを創出する場として「都市廊」を提案しました。「都市廊」は屋根付き回廊で、隣接する街並みや歩道を経由して駅から続く人の流れを生み出します。また柏崎市は雪国なので、利用者が安全に建物へ出入りできる「雁木※空間」の役割も果たします。 さらに、いつも人がいる会館となるよう、リビング的な場として「市民ラウンジ」を設けました。ギャラリーにはさまざまな催しのポスターが貼られ、子どもやファミリーが楽しめるようなしつらいにしています。また駅前にあるので、学校帰りの学生が立ち寄って音楽を聴いたりすることもできます。次の世代を担う子どもたちが、市民会館に親しみを持ついい機会にしたいと考えたのです。 ランドマークでもあるので、駅から見える景観を大切にしました。隣接する公園や建物の前に広がる劇場広場など、豊かな緑に囲まれたレンガ色の文化会館は柏崎市の顔となるでしょう。 建物のデザインテーマは「レンガ」で、サッシまで全てレンガ色に統一されています。外観は多角形の屋根がひとつの特徴ですが、大ホールなどの内部機能がそのまま表出したデザインとしています。そして、南側が全面ガラス張りの建物からは、「米山」をはじめとする「刈羽三山」の景観が楽しめます。また、震災復興のシンボルとするために、高耐久の鉄骨鉄筋コンクリート造と免震構造を採用し、災害時には避難所となる機能も備えています。 旧市民会館の大ホールは、一層構造で音響が良く、市民の方々は木を多用した魅力的なたたずまいを愛していました。その気持ちを新しい大ホールにも生かしたいと思いました。 新ホールの配置は2層構造で、うち一層はバルコニーという計画を採用してい123観客と演者が一体となれるよう、鑑賞環境を整備。※雁木:積雪期でも通行できるよう、新潟県の商店街などで見られる雪よけの屋根。にぎわいと交流を生む文化会館は、震災復興のシンボル。環境デザイン研究所 会長仙田 満 氏Mitsuru Senda所長斎藤 義 氏Tadashi Saito環境設計部 ゼネラルマネージャー古藤田 茂 氏Shigeru Kotodaがんぎ09 THE TOPICS

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