SCENE73
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断面形状を分水嶺形にすることで、隣席客とさりげなくシェアができる。また肘掛を前方に傾斜させ、自然と肩の力が抜けて落ち着けるようにした。座席が壁のように立ちはだからずに人の気配が繋がるようにしたいと考えたからです。このくびれは音響にもいい効果を及ぼしています。また肘掛けは、席幅に限りがあるなかで隣席との関係がいつも問題になっていますので、今回は、中央に「分水嶺」を設けて肘が落ち着く形や角度を探しました。何回も試作品を作ってようやくこの形に落ち着きましたが、市民の方からは好評を得ているようです。今までいろいろな客席を製作してきましたが、人を包み込む形、隣席への配慮、音響効果などからみて、アルフォーレのイスは劇場のプロトタイプの一つといえる機能とデザインを有していると思います。 このようにして造りだしたホールと文化会館を、市民の方々に大いに楽しんでいただき、「アルフォーレ」の名にふさわしい芸術の場に育てていってほしいと願っています。ます。そして、バルコニー席が主階席と舞台を両手の掌で包み込むような形にしました。また私たちは、演じる側と観客側が一体となって催しの内容を共有することが大事だと考えていますので、主階席の傾斜を強くして舞台が近くに感じられるようにしました。さらに観やすくするために、中央部分の座席を千鳥配列にして前の人の頭で視線が遮られないようにし、両側の座席は千鳥配列にはせずに、視軸が舞台へ向くように座席を大きく内側に振った配列にしました。 最も気を配ったのはバルコニー席です。一般的には、クラスが下で主階席から疎外された席と取られがちですが、本当は観やすくて音もいいのです。まずバルコニー全体を思い切って急傾斜にして舞台の框がよく見えるようにし、両側の座席を舞台へ向くよう内側に振りました。そしてバルコニー席をたっぷりと用意したのです。この計画は構造上難しかったのですが、バルコニー席の良さを市民の方々に分かってほしいと考え実現させました。 音響については、1階の中央席の響きが疎になりやすいというホール共通の問題を解決する必要がありました。対策として、舞台からの初期反射音をはじき落とす大小の「庇」を付け、タイルや木の横桟を組み合わせた「側壁」を設けて反射音が中央席へ向かうようにしました。これらの「庇」や「側壁」は、内装デザインの特徴にもなっています。 楽屋については、単なる控室ではなく、アーティストが舞台前に自分の演奏や演技を再確認したり、リフレッシュしたりする重要な空間と捉えてつくりました。外光が感じられる窓を設け、出演者たちが話し合えるラウンジも備えています。 客席椅子のデザインですが、背板の一部にくびれを設けています。これは、前の1 ホワイエ/窓からは柏崎の自然景観が一望できる。 2 市民ラウンジ/トップライトの柔らかい光が射し込み、「音の遊び場」などもある。 3 大練習室/防振・遮音機能を持つ浮構造で、音楽・演劇・舞踊の練習に利用できる。イス:ルッシュ 4 会議室/間仕切りを移動して大スペースに、また楽屋としても使えるように配慮している。イス:ルッシュ4座裏板の開孔面積や座の跳ね上がり角度を検討し調整することで、空席時でも着席時と同等の音響性能を持たせている。背裏板は座り心地の良さはもちろん、客席後部の段床から吹き上がる空気を背裏沿いに淀みなく流せる形状でもある。ぶんすいれいひさしかまちたなごころ肘掛音響性能背もたれTHE TOPICS 10

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