SCENE73

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としています。ラウンジの壁にはホワイトボードが設置され、授業前後でも学生と教員が対話しやすい環境づくりをしました。教室と廊下の行き来ではなく、教室、廊下、ラウンジに「滞在し交流する」ことがねらいです。 ②は冒頭で解説済みですから省き、③については、サインや照明などのデザイナーと協働して魅力的な空間づくりをしています。④については例えば、廊下から教室までの連続感を出すためにカーペットタイルのデザインや質感をそろえ、人にやさしい雰囲気を演出するためにルーバーや家具を木製にしています。⑤については、地下1階のカフェテリアや屋外テラスをはじめ棟内に様々な場を用意しました。 こうした空間づくりによって“滞在したくなる講義棟”へと進化することを期待しています。を期待しています。 先生にICT機器の使用についてアンケートを取ったところ、高機能な機器より、使い勝手の容易なタイプを望む人が多数となりました。高機能になりすぎると、専任スタッフの貼り付けが必要になって手間と費用もかかります。大切なことは“人と人のコミュニケーションがきちんとできる”ことで、機器設備はそのサポートであることを常に忘れないようにしたいですね。 また、ICT機器は進化に合わせて常に更新していく必要がありますから、建築とは異なる寿命サイクルのランニングコストを予定しておくことが大事です。後から機能を足せるよう、裏側に予備スペースを用意しておくのもよい方法だと思います。 2011年10月、駒場キャンパスに“理想の教育棟”の主要施設「21KOMCEE※」がオープンしました。この施設は、新たなアクティブラーニングの実践を目的としています。 アクティブラーニングスタジオ・KALS※の経験から、21KOMCEE では“滞在したくなる講義棟づくり”が重視されたのです。建築計画は、街の中に教室やカフェテリアがあるというような発想をしました。計画のポイントは、①空間を閉じない、②空間に余裕を持たせる、③アートやデザインを重視、④建築や内装の素材を吟味、⑤会話を促す場の工夫、の5つです。 ①については、教室だけでなくホールやラウンジなども開放して、学生が自習や打ち合わせなどに自由に使えるようにしました。こういった用途にホールを使う場合は、広すぎないことが大事です。また開放感をアップするために、ガラスパーティションを多用しています。 KALS と21KOMCEEでは、“廊下”に違いがあります(図)。後者では、廊下と教室の間に壁を設けずガラスで仕切り、さらに廊下の途中にアルコーブを設けてラウンジ1 マサチューセッツ工科大学のアクティブラーニングスタジオ/パソコンを立ち上げ、ホワイトボードに書き込む教員のコメントが、スクリーンに投影されるのを待つ学生たち。 2 マサチューセッツ工科大学のアクティブラーニングスタジオ/初等物理教育を改善するために、10年ほど前からアクティブラーニングの取り組みを開始した。このスタジオは13の丸テーブルが配置され最大117名が参加できる、実験・演習を行う教室としては大規模なタイプ。全方位にホワイトボードやスクリーンが用意され、学生がどこからでも見え、教員はどの場所からでも説明可能。デスクトップ実験をする学生の間を教員が巡回・指導する。 3 21KOMCEEのK101スタジオ/大型液晶ディスプレー、壁面ミラー、モーションキャプチャーが用意されたアクティブラーニングスタジオ。体を使ったパフォーマンスなどのレクチャーに最適。吹き抜けの空間で、2階の回廊から自由にみることができる。 4 ラウンジとして活用しているアルコーブ 5 MMホール吹き抜け天井の照明/照明デザイナー・石井リーサ明里氏作 6 21KOMCEEのMMホール外観滞在型の新たなアクティブラーニング空間。※KALS:2007年、駒場キャンパスに最初に開設されたアクティブラーニングスタジオ。※21KOMCEE:21KOMABA CENTER FOR EDUCATIONAL EXCELLENCEの略。理想の教育棟には3つのコンセプトがあり、「アクティブラーニングに最適な学びの空間」「滞在したくなる知のオアシス」「先進的な環境教育の場であるゼロ・エネルギー・ビル」。エアコンと照明の電子制御や、建築物自体の省エネ化の実験棟でもある。KALS21KOMCEEスタジオの配置図比較室長 教授加藤 道夫 氏 Michio Kato東京大学大学院総合文化研究科 駒場キャンパス計画室特任准教授筑紫 一夫 氏 Kazuo Chikushi45632壁ガラス廊下廊下ウェイティングルームスタジオスタジオ倉庫倉庫スタッフルームスタッフルームラウンジガラス間仕切り無しCULTURAL FILE 18

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