SCENE74
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 KIITOの前身・神戸生糸検査所は約80年前に建設され、生糸の検査や品質管理における西日本での中心的役割を担っていました。歴史的建物として生き続け立地もすばらしいので、神戸市が国から買い取って改修し、創造と交流の拠点を設けることになりました。 KIITOは2012年10月にグランドオープンしましたが、その3年前から活動を始めていました。まず改修前に実験的にどんどん使い、工事が始まってからは近くの神戸商工貿易センタービルへ移動して活動を継続しました。これらの経験が2012年のオープン後にも生かされています。 同年、こども家庭局が新設され、こどもや家族を支える地域態勢がより充実しました。KIITOは、こどもや家族を社会につなぎ、こどもたちに自信を持って未来を語れるような拠点にしたいと考えています。グランドオープンのメインイベントは、こどもたちを刺激する体験プログラムとして「ちびっこうべ」を行いましたが、今後も継続して“こどもや家族”をテーマにイベントを企画したいですね。 今後は、デザインされたものを提供するだけでなく、ゼミやフォーラムなどを通して人を集めたりネットワークをつくったりすることも重視していきます。発信手段としては、ネットだけでなく、フリーペーパーやフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションも必要です。また4階建ての旧館と新館は、延べ床面積が約14,000㎡あります。この広い建物を活用して、新しい空間の使い方を見つけたいと考えています。 神戸芸術工科大学は、人間の立場から技術を駆使する芸術工学の研究を目的に1989年に設立されました。地域から嘱望され、設立当初から神戸市と共に歩んできました。2008年には、これまでの活動が評価され、神戸市と共にデザイン都市を推進するための包括協定を結びました。以後は、学生と教職員が協力して市のあらゆるデザインに関わるようになりました。そして2010年には市からの要請で、「デザイン都市・神戸」を推進する統括監の職を任せていただくことになりました。現職は神戸芸術工科大学の学長ですから、大学としてデザイン・アート・メディアの表現を市民の方たちに様々な場面で提供し、クリエイティブな未来に気づいてもらえるようにすることが、最も大事な役割だと考えています。世界的にみても、大学と都市は常にリンクした関係にあって、大学が元気なら都市も生き生きとしています。また、2012年にはフィンランドのアールト大学との共同展覧会を、ヘルシンキや東京そして神戸のKIITOで行いましたが、海外との大学連携も積極的に進めていきたいと考えています。673Photo:森本 奈津美 4855 「ちびっこうべ」/2012年10月のグランドオープンにあたり、KIITOホールで行われたメインイベント。子どもたちがクリエイターと一緒に夢のまちをつくる体験型プログラム。事前に、建築家、デザイナー、シェフから職業を選んで体験し、お店の設計、デザイン、メニュー作りまでプロから仕事を学び、街づくりを楽しんだ。大学の役割は、市民にクリエイティブを気づかせること。こどもたちに、自信を持って未来を託せる場に。旧館新館NCULTURAL SPACE QUEST 04

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