SCENE75
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更にワイヤー留めをしています。三角形のボックストラスのジョイント部分は、ボールジョイントによって接合しています。この多面トラス構造が、屋根および天井空間の大きなデザイン的特徴となっています。 V字柱の意匠が印象的な外壁は、開放性と閉鎖性そして耐震性を備えています。「白」「ブルーグレー」「グレー」のV字柱のユニットを、少しずつ移動して重ねることで疎密な壁面を作りました。メインアリーナ、サブアリーナともに、内側は開放的で疎な壁面に、外側は閉鎖的で密な壁面になっています。V字柱の外装材には、公共建築としての耐久性や整備面から、セラミックが最適だと考えてタイルを採用しました。 メインアリーナでは、プロスポーツ興行以外に市民スポーツなども行いますので、観客席の配置にはフレキシブルな対応が求められます。そのため、固定席の他に移動できる観覧席が必要になりました。移動席は、妻手と長手の四方から展開・収納ができるうえ中段でも止まるように設定されています。 まず、プロスポーツ興行を実現するために、プロバスケットボール “bjリーグ”の関係者などから話しをうかがい、観客と選手の距離が近くなる密度の濃い空間づくりに取り組みました。理想は、米国NBAリーグのようにすり鉢状の観客席がコート際まで迫っている形ですが、日本では法的な制約からそこまで急傾斜にはできません。せめてコートの際まで観客が下りてこられるよう、固定席と同じ斜度で下の移動席を連続展開できるようにしました。さらに、観戦の臨場感や活気を増すために、四隅の固定席を削り同心円状にセンターコートを囲む形としました。 また、体育館は人がぶつかり合うなど激しい動きのある場です。緩衝や吸音のために、コートを囲む黒いアリーナ壁面へ木のボーダーを取り付けました。ボーダーの幅は、移動席のベンチ幅である250ミリピッチを基準とし、この意匠を固定席や壁面にも展開してデザインを統一しています。 快適な観戦にとって、空調は大事な要素です。空調吹出口は、気温や流速を一定に保つ成層空調をするために、内部にカーブを設けた独自の形体にしました。さらに、メインアリーナのトップライトにある換気口で、煙突効果による自然換気を行い、さらに外気をクールピットから取り入れてアリーナ全体に供給しています。また、地上通路のトップライトから自然光を取り込み、地下1階のモールにやわらかく心地よい空間を創り出しています。 こうした快適なアリーナ空間が、観客と選手が一体となるスポーツ観戦に貢献してくれることを期待しています。1 正面夕景 2 地下1階モール/メインとサブの両アリーナ内が見られ、トップライトからは自然光が射し込む。メイン側壁面のテラコッタ彫刻「森と海と人の賛歌」は世界的な彫刻家・五十嵐威暢氏作。 3 都市公園への通路屋根のトップライト 4 V字柱が連続的に変化する外壁 5 空調吹出口と電動遮光ルーバー/日射の調整は、太陽の向きに同調する自動制御で行っている。メインアリーナ 6 bjリーグ 7 移動観覧席は壁面、スタンド席との意匠統一がなされている。前2段を収納し手すりを取り付けることにより多様な興業に対応が可能となっている。 8.9 前2段の座面を取り外し、イスを配置することでVIP席として利用可能。臨場感や快適性にこだわった、ハイレベルな観戦空間を。4985バスケットボール試合時 1816席バレーボール試合時 1015席移動観覧席 展開パターンPhoto:1.5 (株)スパイラルTHE TOPICS 12

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