SCENE75
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人間の目の網膜には、主に暗いときに働く桿体(かんたい)と明るいところでだけ働く錐体(すいたい)という2種類の視細胞があって、錐体は分光感度が異なる長波長(いわゆる赤)、中波長(いわゆる緑)、短波長(いわゆる青)の3種に分かれています。一方、人の色覚型は基本的に3タイプあり、短波長、中波長、長波長とも分光特性が揃っているC型、中波長の分光特性がずれているD型、長波長の分光特性がずれているP型です。C型の色覚者は多数派で、日本人男性の約95%、女性の約99%を占め、D型とP型の色弱者は少数派となります。 人類の進化と色覚には関連があって、霊長類として樹上で暮らしていたときに、食べ物である緑や黄緑や赤といった長波長の色を見つけやすい「多数派」の色覚工学院大学情報学部デザイン学科 准教授NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構 理事市原 恭代 氏Yasuyo G. Ichihara日本には、色の見え方が一般と異なる色弱者※1が、男性の20人に1人、女性の500人に1人の割合で300万人以上いると言われる。近年、特に公共の場において、こうした色弱者を含むさまざまな利用者の使いやすさに配慮した「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」の必要性が高まり、産官学を挙げての取り組みが進んでいる。カラーユニバーサルデザインを実現するうえで基本となる人間の色覚※2や色環境の現状、および今後のあり方について、工学院大学情報学部デザイン学科の准教授であり「NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)」の理事である市原恭代氏にうかがい、3回連載で紹介する。カラーユニバーサルデザインは、なぜ必要か?カラーユニバーサルデザイン vol.1色を感じる仕組み 図1NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)Color Universal Design Organizationhttp://www.cudo.jp多様な色覚に配慮した色彩環境へ改善することを目的に、一般市民や団体を対象として色使いに関する科学的・実用的な評価・改善提案を行う。2010年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労賞 内閣総理大臣 表彰/内閣府、グッドデザイン賞受賞。※1 色弱者:色弱、色盲、色覚異常、色覚障害などの呼称がある。CUDOが新たに提唱する「色・弱者」は、色の配慮が不十分な社会における弱者という意味。本稿では当事者の差別感が少ない「色弱者」を使用。 ※2 色覚:色の見え方や感じ方。先天的・後天的な原因で多様な色覚型があり、C型、D型、P型がほとんどを占める。C型は一般色覚者で多数派、D型とP型が色弱者で少数派となる。なお、色覚型の名称は、CUDOが使う略称である。目の網膜にある視細胞のひとつ錐体には、長波長・赤を感じるL、中波長・緑を感じるM、短波長・青を感じるSの3種類あり、どの波長の光を主に感じるかという分光感度が、色覚型で異なる。右図は、色覚型ごとの色の感じ方を表している。図1、2:NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構作成「CUD」(ハート出版)より引用これほど多様な色覚は、人類の財産。角膜水晶体網膜視神経硝子体視細胞赤(L錐体)緑(M錐体)青(S錐体)暗暗桿体錐体光13 CULTURAL FILE
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