SCENE75
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C型P型(強度)T型D型(強度) この画像は、草原にいる緑色のバッタの見え方が、多数派のC型と少数派のP型、D型、T型でどう異なるかを表示している。「色のシミュレータ」は、スマートフォンなどの内蔵カメラから得た動画像をリアルタイムに各色覚型に変換する、CUDO推奨のC型用色覚シミュレーションツール。医学・メディアデザイン学の博士である浅田一憲氏が開発・提供。が突然変異で現れました。ところが樹を下りて地上で暮らすようになると、その色覚の優位性が低くなり「少数派」の出現が増えたと言われています。 色覚は、こうした進化やさまざまな要因で多様化していきました。実例を挙げますと、草原で緑色のバッタを見つけることは、多数派には難しいのですが、ある少数派の色覚を持つ人たちは簡単に見つけることができます。彼らの色覚においては草原の緑とバッタの緑が異なって見える色群に属しており、区別しやすいからです。また、北欧には1割以上の色弱者がいますが、彼らの多くは多種類の青緑色の違いを見分けることができます。私がノルウェーに滞在した時に、ある先生から「それらの色は氷が融けていくときに見える色なので、彼らに教えを請えば、薄氷を踏み割るなど危ない目に遭わずに氷上を進めます」とお聞きしました。 私は、「色覚の多様性は人類の財産」と考えています。異なる色覚者が得意なことを交換し合えば、「樹上の葉や木の実」「草原のバッタ」「融けつつある氷」といった、より多くの情報を手に入れることができるからです。 1995年ごろ、私が色彩研究室の助手をしていた東京芸術大学は、色弱者の入学制限をしていなかったので、学生の中に色弱者もいました。色彩演習もそれを意識して行われ、私は彼らについて、おもしろい個性を持っているなと思っていました。その後、色弱者本人と家族の会「色覚問題研究グループぱすてる」の活動など、さまざまな色覚の課題に関わってきました。多数派の色覚がどんな条件の時にも優位であるとは限りません。そういった経験から、色覚の基礎となるような「万能の色覚はない」という考えに至り、それが私の研究の根幹にいつもあるのです。 90年代の後半から、印刷物やインターネットのカラー化が急速に進み、機器の操作ボタンはカラー表示が普通になり、施設の案内表示もカラフルに変わっていき、色は情報伝達の主役として毎日使われるようになりました。しかし、色覚の多様性については、社会的な認知がまだ十分ではありません。今の情報伝達システムでは、多数派には意図通りに伝達されますが、少数派の色弱者には正確に伝わらず、不便で安全が確保できない状況となることがあります。だから、色覚タイプの違いを問わず、多くの人に情報を正確に使いやすく提供する「カラーユニバーサルデザイン」が必要になってくるのです。「色のシミュレータ」を使用して見たバッタの画像「色のシミュレータ」価格:無料対応端末:iOS 4.3以降/Android 2.1以降http://asada.tukusi.ne.jp/cvsimulatorC型P型D型T型強度弱度強度弱度3つの錐体の分光特性(C型例) 図2相対的な錐体の刺激値光の波長400500600700nm色覚型ごとの色の感じ方L錐体M錐体S錐体C型はいわゆる赤・緑・青を感じる分光特性が揃っている。P型の強度はいわゆる赤を主に感じる分光特性が無い、弱度は緑にずれている。D型の強度はいわゆる緑を主に感じる分光特性が無い、弱度は赤にずれている。T型はいわゆる青を主に感じる分光特性が無い。C型の色帯を下へ順に見ていくと、P型、D型、T型の色の感じ方が分かる。第2回は「カラーユニバーサルデザインの現状」、第3回は「カラーユニバーサルデザインの今後」について紹介します。今こそ、カラーデザインの見直しを。※画面はイメージで、実際の画像とは異なります。C型P型(強度)T型D型(強度) CULTURAL FILE 14

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