SCENE75
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リニューアルを契機に、新しい歴史を伝統にプラス。 改修後の見どころのひとつは、校内へのアプローチとなる“長いスロープ” です。校門を入り、柱が立ち並ぶなかを上っていくのは気持ちがいいですね。学校の敷地は、校門がある山側と第1グラウンドがある海側との落差が半階分ほどあり、以前は校門から下って1号館の1階から入り、2階へ上っていました。しかし、設計者からの提案で発想を変え、半階分をスロープにしたので自然に2階へ行けるようになりました。 職員室前には対話コーナーを設けて、生徒と教員そして生徒同士が話し合える場をつくりました。さらに、1号館の古い角教室を取り壊して、生徒たちが集えるようにオープンスペースに変えました。黒板だけは残して、教室だった雰囲気が感じ取れるようにしています。 最初は全て新しい家具にする予定だったのですが、歴史が詰まった家具を見回しているうちに、家具もリニューアルすることになりました。 そして85周年記念として、創立時の顧問であり講道館創設者の嘉納治五郎先生を顕彰する銅像を建立しました。柔道は創設当初から正課として行われてきた歴史があり、新設された柔道場は3代目で、スプリング床と専用柔道畳を組み合わせて使用しています。中学校学習指導要領改訂により、2012年から中学1年~3年まで全員に、武道などを指導することになりました。武道は、きちんとした道場と指導者がいないと危険ですが、当校ではベテランの先生と蓄積されたノウハウがあり、安心して指導できる基盤があるのです。1423独自の教育方針を反映した、新図書館の構成。 図書館は、蔵書を収めたうえで、少なくとも1クラス以上が入る広さと席数が必要です。しかし旧図書館では、本が増えて狭くなり、クラス単位の授業が不可能になりました。そこで、円形の天井と大階段を備えた図書館を新設したのですが、中・高としては、おもしろい図書館が出来上がったのではと思っています。本好きの生徒が多い当校ですが、閲覧スペースが少なかったので貸し出しが中心でした。新図書館へできるだけ多くの生徒に来てほしいという司書の強い意向もあって、入口を計4ヶ所設けました。 当校は理系の学校とされていますが、国語教育にも力を入れています。戦後の教育改革の中で必修教科から外された古典や漢文は、日常では使いませんが、グローバルな人間を目指す日本人の教養として身につけておく必要があります。古典コーナーには、ゆったりできる畳敷きの場も用意し、冬は床下の物入れからコタツを出してきて使えるようにしました。同じく必修から外れた幾何学も、頭が柔軟な中学生の時期に勉強すると、思考力が鍛えられ創造力につながっていきます。こういった科目も、当校は教育に取り入れています。受験科目にあるかないかではなく、大学に入ってから伸びる、そして、社会に出てから活躍できる人間を育てることを大事にしたいと考えています。また、勉強ばかりしている学校と思われていますが、終業後は決められた補講もなく自由時間となります。それをどう活かすかは本人次第で、自主性や自立心を伴ったうえでなら、クラブ活動に限らず自分たちのしたいことに邁進すればいいと考えています。1 3号館2階 対話コーナー/イス、テーブル:特注品 2 西館 スロープ/この先に対話コーナーがある。 3 1号館4階 オープンスペース/ベンチ、机は再生家具。 4 1号館3階 第2英語教室/イス:ティーポ、デスク:SCM-30005 CULTURAL SPACE QUEST

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