SCENE75
7/32

 教育方法の変遷に係わらず学校の建物は残っていきますので、卒業生の思い出が残る校舎を耐震リニューアルをして使っていく方がいいと、私たちも考えていました。設計期間を2年以上いただいたので、灘中学校・高等学校の伝統をどう引き継いでいくかという課題について、じっくりと考え検討することができました。 その結果、1号館の躯体はいろいろな可能性を持っていることが分かり、それが解決へのひとつのヒントになりました。耐震旧・1号館と新設のスロープが、リニューアルの軸に。は、学校側の希望もあって伝統をできる限り損なわないようにアウトフレーム工法で行い、もともと奥行きのあったファサードにフレームを設置したことで陰影がより深くなり、多くの棚もできました。その棚が緑化に役立っています。堅固な躯体なので、1階部分を抜いてピロティーに、1階の中廊下を新図書館の部屋にと活用をしました。 また、私たちの提案で、校内へのアプローチに長いスロープを設けたのですが、このスロープが改修全体のガイドとなりました。そのまま主階の2階へ上り、中学棟、職員室、高校棟、そして図書館をロの字につないで回遊できるようにし、スロープ脇には学校にとって重要な施設を点在させました。例えば西館の新しい柔道場は、灘中学校・高等学校の伝統そのものですから、この学校のオリジンを知ることができるよう、全生徒がいつも通るスロープの真横に設置しました。職員室も、学校からの強い要望でスロープ脇に置くことになったのです。改修をサポートする建築と家具の役割は、“古”を活かし“新”を融合させること。(株)日建設計執行役員 設計部門代表大谷 弘明 氏Hiroaki Otani(株)日建スペースデザインシニアデザイナー藤井 崇司 氏Takashi Fujii図書館/屋上庭園から1号館を望む。CULTURAL SPACE QUEST 06

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る