SCENE75
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 新図書館は、1号館と2号館の間に、過去、現在、未来の3時代の施設を横断する形で、継ぎ目無しに建てられました。全くの新築ではそういったことは考えませんが、これが改装のおもしろさだと思います。また、スロープで回遊できるようにしたことで2階が活動の主階となり、図書館のある1階は落ち着いた空間になりました。 内観については、図書館の中心部にハイサイドライトを設置しました。これには、1号館や2号館との継ぎ目を利用者に意識させないようにする意図もあります。天井は富士山型で、梁が放射状に拡がり、射し込むトップライトが室内を柔らかく照らします。床がすべて同レベルではつまらないので、穴ぐらのような場もつくりました。これは大階段下のデッドスペースを有効活用したもので、天井高を確保するために床を掘り下げています。 外構については、図書館の屋根に屋上庭園を造り、大階段でスクエアへ下ろす動線を考えました。この中庭は新しく整備したもので、北隣にある昔の中庭とは1号館のピロティーでつながっており、さらに2号館のピロティーをくぐって南側のグラウンドへ抜けることができます。 新設した職員室前の対話コーナーについては、 “生徒たちが職員室へ気軽に来られる”ようなマグネット効果を求められました。そこで、窓の外に緑が見えて寝ころがったりもできる心地良い空間を作ることにしました。机は円形・三角形・多角形にし、ベンチは同形の切り込みを入れたりして遊び心を持たせました。先生と正面向きで話せないときは三角形の席を、みんなで囲みたいときは円形の席を選ぶとか、活用していただきたいですね。 灘中学校・高等学校に足を踏み入れた当初、私たちは再生家具の宝庫だと感じました。70数年間使い込まれてきた家具は、リペアすればさらに倍の歳月は使用できるのではないかと…。無垢材が多いので、磨けばきれいになるし、キズやヘタリは現代の技術で補修して生まれ変わらせることができます。取り壊した旧教室の1歴史ある施設をつなぐ、新図書館。歴史の厚みを感じた、家具の再生。07 CULTURAL SPACE QUEST

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