SCENE76
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 日本の交通信号は、世界で一番進んでいると私は思っていて、すでに1980年代から、色弱者が混同しないような赤色と緑色を採用しています。1999年には国土交通省が、国内全ての誘導表示をバリアフリーにするため「観光活性化標識ガイドライン」を義務づけ、同年に当時の郵政省と厚生省も、高齢者・障害者など色覚情報弱者に対するWebアクセシビリティー※3を上げる目的で「電気アクセス協議会(当時)」を開催しました。こうして社会的に少しずつ認知されるようになっていきました。色弱者は、自らを障害者とは思わず誘導標識に問題があると考えています。これは当然なことで、私は「色覚バリアフリー」という考え方を提示し、障害は色弱者にではなく、デザインする側にあると訴えてきました。 「カラーユニバーサル機構(CUDO)」の設立者の中には色弱者もいて、彼らは解工学院大学情報学部デザイン学科 准教授NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構 理事市原 恭代 氏Yasuyo G. Ichihara日本には、色の見え方が一般と異なる色弱者※1が、男性の20人に1人、女性の500人に1人の割合で300万人以上いると言われる。近年、特に公共の場において、こうした色弱者を含むさまざまな利用者の使いやすさに配慮した「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」の必要性が高まり、産官学を挙げての取り組みが進んでいる。カラーユニバーサルデザインを実現するうえで基本となる人間の色覚※2や色環境の現状、および今後のあり方について、CUDOの理事である工学院大学准教授・市原恭代氏にうかがった。カラーユニバーサルデザインは、必然の課題。カラーユニバーサルデザイン vol.2NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)Color Universal Design Organizationhttp://www.cudo.jp多様な色覚に配慮した色彩環境へ改善することを目的に、一般市民や団体を対象として色使いに関する科学的・実用的な評価・改善提案を行う。2010年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労賞 内閣総理大臣 表彰/内閣府、グッドデザイン賞受賞。※1 色弱者:色弱、色盲、色覚異常、色覚障害などの呼称がある。CUDOが新たに提唱する「色・弱者」は、色の配慮が不十分な社会における弱者という意味。本稿では当事者の差別感が少ない「色弱者」を使用。 ※2 色覚:色の見え方や感じ方。先天的・後天的な原因で多様な色覚型があり、C型、D型、P型がほとんどを占める。C型は一般色覚者で多数派、D型とP型が色弱者で少数派となる。なお、色覚型の名称は、CUDOが使う略称である。 ※3 Webアクセシビリティー:高齢者・障害者を含めて誰にでも使いやすいウェブサイトであること。命に関わる標識は、色覚バリアフリーが原則。一般色覚者C型色弱者D型信号の見え方の違い 写真1写真1:NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構作成「CUD」(ハート出版)より引用写真2:東京メトロよりご提供写真3:TOYO INK GROUPよりご提供13 CULTURAL FILE

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