SCENE77
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 色覚に対する基礎研究はいろいろと進められており、例えば私の研究室では、少数派である色弱者と多数派である一般色覚者どちらも使える、色度をわかりやすく説明する図を作りました。学会で発表したこの色度図※3が、さまざまな利用者の使いやすさに配慮した「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」に役立つのではと期待しています。これはどのようなタイプの色覚でも判別できる色の組み合わせを示したものです。 病気や高齢で見えにくくなった方と違い、色弱者は明確な色のカテゴリーを持っているうえに見え方が安定しています。そのカテゴリーが明らかになれば、対応することができます。例えば、多数派は赤色に敏感でどんな赤にでも反応しますが、少数派は赤色には2種類あることを工学院大学情報学部デザイン学科 准教授NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構 理事市原 恭代 氏Yasuyo G. Ichihara日本には、色の見え方が一般と異なる色弱者※1が、男性の20人に1人、女性の500人に1人の割合で300万人以上いると言われる。近年、特に公共の場において、こうした色弱者を含むさまざまな利用者の使いやすさに配慮した「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」の必要性が高まり、産官学を挙げての取り組みが進んでいる。カラーユニバーサルデザインを実現するうえで基本となる人間の色覚※2や色環境の現状、および今後のあり方について、CUDOの理事である工学院大学准教授・市原恭代氏にうかがった。カラーユニバーサルデザインへの期待と尽力。カラーユニバーサルデザイン vol.3NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)Color Universal Design Organizationhttp://www.cudo.jp多様な色覚に配慮した色彩環境へ改善することを目的に、一般市民や団体を対象として色使いに関する科学的・実用的な評価・改善提案を行う。2010年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労賞 内閣総理大臣 表彰/内閣府、グッドデザイン賞受賞。※1 色弱者:色弱、色盲、色覚異常、色覚障害などの呼称がある。CUDOが新たに提唱する「色・弱者」は、色の配慮が不十分な社会における弱者という意味。本稿では当事者の差別感が少ない「色弱者」を使用。 ※2 色覚:色の見え方や感じ方。先天的・後天的な原因で多様な色覚型があり、C型、D型、P型がほとんどを占める。C型は一般色覚者で多数派、D型とP型が色弱者で少数派となる。なお、色覚型の名称は、CUDOが使う略称である。 ※3 学会で発表した色度図:池田知弘,市原恭代,「混同色の検証によるカラーユニバーサルデザインの研究」日本色彩学会色覚研究会 平成24年第1回研究会論文集pp.1-2に掲載。 ※4 マゼンタ:印刷インクの三原色のひとつで、明るい赤紫色。赤い鳥居は、カラーユニバーサルデザインだった。CUDO推奨の色弱者用色覚補助ツール。スマートフォンなどの内蔵カメラとスクリーンを使って、見えにくい色をリアルタイムに見えやすい色に変換したうえ、オリジナル画像と交互に表示する。医学・メディアデザイン学の博士である浅田一憲氏が開発・提供。色弱者用補助ツール「色のめがね」「色のめがね」価格:無料対応端末:iOS5.0以降http://asada.tukusi.ne.jp/cvsimulator※画面はイメージで、実際の画像とは異なります。15 CULTURAL FILE

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