SCENE77
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 風致地区内にある世田谷キャンパスでは、建物の高さを15m以下に抑えなければなりません。そのために、地上4階建て・地下1階、延べ床面積が約1万5000㎡、全長約100mの建物となりました。 この条件下で、学生や教職員を飽きさせない豊かな空間をどう実現するかに意識を集中し、最大5層の吹き抜けを中心に、回廊型の廊下を設ける基本計画としました。東京都の安全条例に「行き止まり廊下の禁止」とありますが、回廊型の廊下は、2方向避難がしやすい安全・安心設計です。そして、吹き抜け付きの回廊とすることで、商業施設のように人の気配が感じられる楽しい空間を創出しました。 コンセプトのひとつ“学生が利用しやすい快適な施設”については、「CS向上推進活動報告書」から、学生や教職員のニーズを拾い上げて、設計や施設整備に反映しています。 まずは、学生の学びや生活そして就職へのサポートを充実するために、総合インフォメーションエリアを1階に設けました。このエリアをベースにして、2~4階に、教室、研究室、事務室の各エリアを、明解にゾーニングし配置しています。教室については、学生のニーズを取り入れて、座席の前後幅をゆったり取るなど、人員数より快適さを優先した空間を目指しました。また、各階の中央と両端にラウンジを設けて、学生たちが授業外の時間を自由に過ごせるエリアとしました。ラウンジの家具はすべてデザインが異なり、学生の好みや気分に合わせて選べるよう配慮をしました。 もうひとつのコンセプト“環境配慮型の設計”については、横浜キャンパスでの経験を基に、専門家の考えも取り入れ、徹底して環境に配慮した施設としました。 新1号館では、空調エネルギー負荷の低減をするために、陽射しを自動制御する外付けブラインドや、自動制御された換気窓による自然通風システムを採用。電気エネルギーの削減としては、昼光利用をするためのトップライトや、屋内に自然光を導入するライトシェルフ、もちろん太陽光発電やLED照明も活用しています。ヒートアイランドへの対策は都市型キャンパスの使命で、新1号館の広い屋上や壁面の緑化に取り組んでいます。現在、「東京都市大学方式の人工面の再緑地化技術※」をテーマにした研究も進められており、今後、キャンパス内での利用が予定されています。 これからの施設整備には、東京都市大学方式と呼ぶさまざまな知識や技術を、積極的に活用していきたいと考えています。※東京都市大学方式の人工面の再緑地化技術:都市緑化を目的とした草地転換の技術。アスファルト面に人工芝を貼り、そこに植栽基盤を作って天然芝を育てるので「ハイブリッド芝」と呼ばれる。法人本部 総務グループ専任部長[施設担当]渡辺 透 氏Toru Watanabe東京都市大学ならではの技術を駆使し、学生が使いやすい施設に。学びとくつろぎの空間に、学生のニーズをきめ細やかに反映。中層で横長の建物を、表情豊かな利用しやすい空間に。建物をより進化させた、都市大独自のさまざまな技術。自然換気 B自然換気自然換気自然採光換気窓吹 抜自然換気自然換気自然採光研究室西日遮蔽ラウンジ オーク研究室教室教室教室/PC教室教室教室教室教室教室外付ブラインド Aトップライト C換気窓(ソーラーパネル)太陽光発電ライトシェルフ D東側西側CO2センサー E吹 抜1階3階4階B1階2階新1号館 断面図(2期工事)A 太陽の位置に合わせて角度調整し、日射をコントロール B 吹抜部の煙突効果による効率的な自然換気 C 内部空間に自然光を届ける D 午前中の光を取込、夏の日差しを遮蔽 E 各教室に設置したCO2センサーにより機械換気の風量を制御 新1号館の工期/工事は2期に分けて進められ、南側半分は1期工事で、北半分は2期工事で完成。総工期は2010年11月~2013年12月までの3年間。CULTURAL SPACE QUEST 06

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