SCENE79
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 学食の差別化をひとつの大学が始めると、他大学も次々に取り組み出すので、現在はオリジナリティーのある学食が肩を並べている状況です。今回はその中から、基本を踏まえたうえでその大学らしさを実現している学食として、“青山学院大学” “中央大学” “東洋大学”をピックアップしてみました。 青山学院大学は、最も古くから学食に力を入れてきたことで味・量・値段のバランスが良く、青山キャンパス17号館にある学食では、「青山物語」「表参道」など独自メニューが人気で行列ができるほどです。都心に在るのに学食スペースは広く、家具は木調で内装は落ち着いてシックな印象を受けます。中央大学の多摩キャンパスは、山の中に位置し近隣の飲食店が少ないので、レストランやカフェなどが入った全座席数が3000を超える4階建ての学食棟「ヒルトップ」を設けました。また、モノレールの駅とキャンパスが直結され、学生はもちろん一般の方も入りやすくなっています。学食棟はいつも利用者で賑わい、ロケーションの不利を克服しつつあるのではないでしょうか。また、東洋大学の白山キャンパス6号館地下1階にある学生食堂は、学食とは思えないクオリティーで早稲田大学学食研究会からも高い評価を得ています。フードコート形式で、インドカレーなど専門店の他に、学生が先生と立ち上げたこだわりのおむすび店「結(むすび)」もあり、昼時は学生で活気づきます。 私は、これからの学食を考えるポイントは、「1.大学で生きた学問をする」「2.海外を意識する」「3.学食における産学連携」「4.食べるだけでなく心のリフレッシュも」─と考えています。 1.については、千葉商科大学がおもしろい試みを実践しています。学生店長を学内から募り、仕入れやメニューづくりなど全ての学食経営を任せています。売上が落ちれば収益も減りますが、学生アルバイトとは違う生きた学問ができます。 2.については、東京大学駒場キャンパスの高級フレンチレストラン「ルヴェソンヴェール」などがそれにあたります。やや高価格ですが、学生は海外で通用するマナーと食文化を体験できます。外国人の利用が多く、大学の接待にも利用しているそうです。 3.については、私も関わりましたが、ファミリーマートのネット通販を運営する(株)ファミマ・ドット・コムが中央大学と共同で商品化した「中央大学 白門カレー」などがあります。大学は社会や受験生への宣伝効果を、企業は学生の就職後も見据えたカスタマー訴求をねらっています。 4.については、デザインの洗練された内装や家具が増えたこと。明るくナチュラルな椅子や心地よいソファーで食事後もおしゃべりや自習ができると、リフレッシュして学習意欲も上がると思います。 私は、これからの学食のポイントは3つあって、食育や食文化まで考慮した“食”や、大学の特色が活かされた“色”、さらには居心地のよい家具や内装など意匠の装飾性に配慮した“飾”が大切になると感じています。また、学食を大学と学生という視点だけでなく、より広い視野で捉え、OB、保護者、地域、企業、世界、そして流行りつつあるリカレント※の学生なども巻き込んでいけば、新たな学食の道が開けてくるのではないかと考えています。甲乙つけがたいオリジナルな学食が林立。より広い視野で捉えれば学食の未来が見えてくる。1 東京大学 「ルヴェソンヴェール」の「本日のAランチ」 2 東洋大学 「結(むすび)」と「おむすびSet」 3 中央大学 「白門カレー 200g 3個セット」4 青山学院大学 「日替わり定食 青山物語」 5 東京農業大学 土産「農みそ」 6 中央大学 「ベーカリー&カフェ・フラット」と「日和」のにぎり寿司BPhoto:1.2.5.6 『安くておいしい学生食堂』(PHPエディターズ・グループ) 3 (株)ファミマ・ドット・コム 4 唐沢 明しょくしょくしょく※リカレント(recurrent)/意味は回帰・循環する。社会人が、職業上の新たな知識・技術を習得するため、教養や人間性を高めるために、高度で専門的な教育を繰り返し学習すること。124563CULTURAL FILE 10

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