SCENE80
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 私は24歳で医療秘書の教室を起業しましたが、当初は事業収益のことが最重要課題でした。しかし組織が大きくなっていくと、その組織の目的やビジョンを示して、従業員の心をひとつにまとめることが必要になってきます。当学園の目的は何だろうと考えたときに、“ここで働く人たちの幸せ”が最も重要だと思い至りました。なぜなら、彼らが幸せになって初めて、生徒にいい教育ができ、卒業生が社会で活躍することで社会全体が幸せになると考えたからです。こうして「生徒の幸せ、社会の幸せ、学園の幸せ。その三つがかなえられたら、幸せ」という経営理念ができあがりました。 さらに一歩進めて、「世の中の困難を希望に変える」というミッションとビジョンを策定しました。さし迫った例として“出産後も働きたい女性が利用できる保育所が足りずに多くの待機児童がいる”という状況が世の中にあります。それを克服するために、福祉・保育教育の実績がある当学園は、保育所をつくり、そこで働く保育士を東京未来大学福祉保育専門学校で養成するというミッションを掲げました。目指すビジョンは、女性が望む安心して働ける社会の確立です。このミッションとビジョンのもとで教職員が一体となって、事業を進めていきます。 当学園では、全教職員の心をひとつにまとめるために、毎年2回の「ビジョンミーティング」を、25年間ほど続けてきました。私の考えや将来のこと、そして教職員への要望などをしっかりと伝えます。全国から1000人位が集まりますので大変ですが、私の考えを理解し全教職員が一丸となって大きな力を持つことはとても大事なことだと考えております。三つの幸せをかなえるために“面倒見のいい”学園づくりを。まずは学園で働く教職員の幸せと一体感を重視学校法人三幸学園 学園長鳥居 秀光 氏Hidemitsu Torii 創業後、学園の事業区域に教育関連の大手企業が進出してきて、生徒数が激減したことがありました。対策を一生懸命考えて、お客様である生徒に「一番不安に思っていることは何ですか?」と尋ねましたら、答えは「頑張って勉強しても最後に試験に受からないこと」でした。それに応えるために、“合格するまで無料で面倒を見る”というシステムを、当時つくりました。 また、東京未来大学の開学前には、高校の生徒や先生に「今の大学に足りないと思うことは?」と尋ねてみました。答えは「面倒見のよさ」でしたので、これを当大学のポリシーとしました。大学の教員は一般的に、自らの研究を中心に据えている場合が多く、個々人の面倒も見てほしいという学生のニーズに対応し切れていません。そこで、“面倒見のいい”ことは当学園の強みとなり、他に対する優位性として脈々と受け継がれてきたのです。こうした優位性をひとつ持てば、教育界のみならず、どの業界でも必ず生き残れると思っています。創業時からの優位性は“面倒見のいい”こと07 CULTURAL SPACE QUEST

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