SCENE82
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21 従来の大学図書館は、蔵書を充実して学生や教員に提供し、学習や研究に役立てることが主な役割でした。しかし文部科学省は、2010年に公開した「大学図書館の整備について」のなかで、求められる大学図書館像のひとつにラーニングコモンズを提起しました。図書館にある蔵書や資料などのコンテンツと、インターネットから入手する情報を使って、複数の学生たちが主体的に議論を進めながら学習や研究ができる場を、図書館内に取り入れるべきであるという趣旨でした。 その趣旨を受けて図書館を改装し、2014年11月に図書館ラーニングコモンズ「てらす」をオープンしました。まずは、学生が自由に集まって調べたり議論したりする、新たな学習の場として活用されています。私自身は日本語日本文化学科の教員でもありまして、図書館所蔵の貴重資料である「伊勢物語」や「源氏物語」の注釈書やカルタなどのデジタル化を進めていますので、この「てらす」を使って、学生と一緒にその画像を見ながら、調べたり比較したりしたことを発表させるというようなゼミを始めています。 「てらす」という名前の由来は2つあり、ひとつは、このスペースが棚田“Terraced elds”のような形態になっているから。もうひとつは、学生たちとその将来を明るく“照らす”という意味合いを掛けています。「てらす」は3エリアに分かれ、1階の「てらす1」はイベント・展示エリア、中2階の「てらす2」はグループワークエリア、2階の「てらす3」はピアラーニング※エリアです。 各スペースは透明性が高く、「見る」「見られる」という関係が創り出されます。学生たちは「見る」「見られる」という環境のなかで成長し、皆の前で堂々と発言や発表ができるようになっていくのではないかと思います。 「てらす1」では、先日、「お茶会」が催されました。茶道の心得がある図書館職員の発案で、茶道部の学生と一緒に行ったものです。書道部作の屏風も演出に一役買っていました。「てらす2」は、教員が主体のゼミや授業、そして学生の自主的な学習にと、積極的に利用してほしいと思っています。ピアラーニングエリアである「てらす3」は、キャリア教育や就職活動をサポートする場です。将来は、専門の係員や大学院生が学生の相談に応じられるようにしたいと思っています。今日も、4年生の就職内定者に下級生が体験談を聞くというイベントが開かれていました。本学には、上級生が下級生を教えたりアドバイスしたりするスチューデントアシスタントという制度があります。年齢差が少なく同様な経験をした上級生のアドバイスは下級生にとても効果的だからです。 改装後は、これまで図書館を利用していなかった学生にも来てもらえるようになりました。将来的には、学生や教員が気楽に使え、やりたい事を自由に発信できる場にしていきたいと考えています。図書館が持つ機能を活用して新たな学びの場を創出学生も教職員も積極的に利用してほしい「てらす」の機能「てらす」は学生の成長や活躍を明るく照らす場ラーニングコモンズは、活発な学びと情報発信の基地。神戸松蔭女子学院大学 図書館長田中 まき 氏Maki Tanaka3※ピアラーニング:ピア(peer)は仲間を意味する。対話を通して学習者同士が協力して学ぶ学習法。1 てらす2/てらす1で行われるプレゼンテーションを、てらす2のカウンター席から見ることができる。 2 てらす1/お茶会ではタブレット付チェアを活用。 3 てらす2/少人数~複数で利用できるグループワークエリア。館内ではノートPCの貸出も行っている。3305 CULTURAL SPACE QUEST

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