SCENE83
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エモーショナル・スペース・デザイン 代表公益社団法人日本サインデザイン協会 常任理事渡辺 太郎 氏Taro Watanabeサインデザインの向上と普及を目指して、1965年に発足。グラフィックデザイナー、インテリアデザイナー、照明デザイナー、建築デザイナー、景観デザイナーなど、多様なメンバーで構成されており、わが国で唯一のサインデザインに関する顕彰事業「SDA賞」をはじめ、サインデザイン関連の出版事業、受託事業、調査研究事業など幅広い活動を展開している。公益社団法人日本サインデザイン協会(SDA)Japan Sign Design Associationhttp://www.sign.or.jp/実践女子大学が所蔵している襲色目の見本帳。出典:「かさねの色目 平安の美裳」 長崎盛輝著 京都書院 1988年※1 向田邦子:1929年-1981年。放送作家、エッセイスト、小説家。実践女子専門学校国語科(当時)卒業。第83回直木賞受賞。実践女子大学図書館(渋谷キャンパス)には、向田邦子氏に関する文献や遺品を集めた向田邦子文庫がある。※2 袷せ(あわせ)着物:秋から春にかけて着用する着物で、表布と裏布の2枚で作られているもの。「襲色目」で表現する実践女子大学“らしさ”。教育施設のサインデザインに取り組むとき、私はその学校“らしさ”を表現したものになるよう心がけています。場所や目的地を案内・誘導するサインの機能だけでなく、その学校オリジナルなデザインにこだわることが、学生にとってそこで過ごす時間の意味につながると考えるからです。実践女子大学の新校舎についても、サインデザインが大学のアイデンティティを表現するよう意識して取り組みました。その際、手がかりとなったのが大学の理念や歴史です。学祖下田歌子先生が和歌に精通された方であることから、伝統的に日本古来の文化を大切にしており、文学部からは作家の向田邦子氏※1を輩出しています。由緒ある文学部をはじめ文系学生たちの学舎となったのが、創立120周年記念事業の一環として実践女子学園の発展の地である渋谷校地に建てられた新校舎でした。これに着想を得て提案したのが、「襲色目(かさねいろめ)」をテーマにしたサインデザインです。襲色目とは、平安時代の十二単(じゅうにひとえ)のように、いくつもの色の衣装を重ね着したり、表地と裏地がある袷せ(あわせ)着物※2の配色法で、日本の伝統的な色の文化です。これが実践女子大学の伝統から醸し出される日本文化のイメージに通じると考えました。 かさねいろめ2367CULTURAL FILE 08

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