SCENE84
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1 名古屋大学は、文部科学省の平成25年度の取り組み「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM※)」に、愛知県、豊田市、トヨタ自動車とともに共同申請をして採択を受けました。この活動を進める拠点施設としてNICが建設されたのです。 本学が設定したビジョンは「高齢者が元気になるモビリティー社会」。その3本柱は、高齢者が「安心して出かけられるような乗り物の可能性」「外出したくなるコトづくりや外出情報サービス」「安全な交通インフラや外出先の街づくり」です。100年後の漠然としたビジョンではなく、10年後にめざす社会の姿を描き、それを実現するうえで必要となる研究や開発を推進していく“バックキャスティング”という考え方をしています。単なる研究で終わらせないためには、社会への実装力が求められますので、企業や自治体との連携が不可欠となります。 COI拠点は全国にいくつかありますが、名古屋大学の特徴は、学内、企業ともに多分野でかつ実践的な研究グループが参画していることです。“ものづくり愛知”という地域性もあるかもしれませんが、中核となる自動車をはじめ、情報、医療、プラズマ、工学、私が専門とする建築やデザインなどの研究者たちが、ビジョンを実現するためにNICに集まり、アンダーワンルーフ※で研究や開発を進めています。 今後さらに重視されていく産学官連携研究を進めるNICの立地には、“アクセスの良さ”と“多くの人の目に触れること”が求められました。ですから、地下鉄の名古屋大学駅から近く、主要道路の山手通りに面しているこの場所が建設地となりました。 ここは、学内を行き交う人々が多い広場にも面しているので、エントランスホールの青緑色の壁面とその前に置かれた赤い椅子は、この場所を特徴づけるランドマークとなっています。また、1階にはプロジェクトの中心となるモビリティ部門の「車両実証実験室」が設けられ、ガラス張りになった山手通り側とエントランスロビーからは、一般の方々も見ることができます。産学官が連携して異分野をつなぎ、イノベーションを創出する拠点。名古屋大学 工学部施設整備推進室/環境学研究科都市環境学専攻建築学系准教授太幡 英亮 氏Eisuke Tabata※アンダーワンルーフ:今までの産学連携は大学の研究者個人と一企業をつなぐ“糸電話方式”が一般的だった。NICでは研究者と企業がひとつ屋根の下に集結して研究を進める新たな連携体制を採用している。※COI(CENTER OF INNOVATION)STREAM:文部科学省が開始した、10年後のあるべき未来社会の実現を産学連携で目指す、ビジョン主導型の革新的な研究・開発。近未来の理想を実現する、革新的な研究拠点「NIC」多分野の実践的な研究者が、ひとつ屋根の下に集結産学連携エリアの顔として、学内外へアピールする「NIC」1 5階コモンスペース/ブレーンストーミングがしやすい空間づくり 2 車両実証実験室の高精度ドライビング・シミュレーター 3 センサー装備スマートチェア&ロボット 4 エントランスホール/ランドマークとして印象づける場づくりをCULTURAL SPACE QUEST 02

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