SCENE84
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集中直接分散間接共用研究室集中・間接型集中・直接型分散・直接型分散・間接型4 NICの建設地は、北側のキャンパス街路や工学部5号館、西側の山手通り、東側のES総合館に囲まれた三角形のスペースです(3)。建築計画上、効率よく部屋が並べられる長方形に対して、三角形は廊下の面積が増え、あまり効率のよくない形です。しかし、この一見不効率な空間こそ、機能的な研究・実験室から活動が溢れ出る余白にふさわしく、アンダーワンルーフのコンセプトを実現できるものと考えました。 三角形の各辺には研究室を配し、中央の三角形の共用スペースにはコピーコーナーやキッチン、打合せ用のスタジオやアトリエなど多様なコーナーを配置しました(2)。こうして、通路と一体になったコモンスペースが誕生したのです。そのスペースは、単に移動するための通路ではなく、研究室とそこで働く人たちを「つなぐ」空間でもあり、私はそちらの方が大事な役割を持つのではないかと考えています。 NICのコモンスペースを計画する前に、「つなぐ」空間に関する「行動観察調査」を行いました。これは、大学の研究棟の廊下とそれに付随するラウンジなどの共用スペースに着目し、行き交う人の数や会話などの状況と空間との関係を調べるものです。これらを分析して、研究室と共用スペースの関係を4タイプに分類してみました(1)。調査結果では、「集中・直接型」というタイプに最も多くの交流活動が観察されました。それは、共用室が1ヵ所に集中して廊下と一体化し、共用スペースに研究室から直接アクセスできる形です。 そこでNICでは「集中・直接型」を採用して、各研究室から出た直ぐの場所にコモンスペースが広がり、いつも何かが起きているという状況の創出をねらいました。このスペースを利用する人たちは、休憩しながらたまたま会った人と言葉を交わし、様々な活動を目にし、自分の研究とは関係の無い議論に耳を傾けるかもしれません。敷地が三角形だからこそ生まれた、魅力的なコモンスペース行動観察に基づいて、活き活きとした「つなぐ」空間を計画 しかし、共用スペースと設備を用意しただけでは、なかなかコミュニケーションは活性化しません。研究者がだれでも自由に使えるスペースですが、逆に遠慮をし合って使いづらくなる場合もあります。コミュニケーションの活性化には社会的な関係づくりが大事で、交流を促す運営上の工夫も必要となります。そのきっかけとして、各フロアに「自治会」ができはじめており、研究者同士が顔見知りになる機会となっています。さらに、日常的なイベントとして定期的な「ティータイム」を提案し、コーヒーや菓子などを用意して環境を整えたいと考えています。空間づくりと同じように大切な、人と人を「つなぐ」関係づくり31 2階コモンスペースのスタジオやハイカウンター/ガラスを通して見える打合せの様子がお互いを活性化 2 5階コモンスペース/廊下が重要な役割を果たす。いたるところにあるホワイトボード。ハイチェア:ティーポ、ソファ:NZS、テーブル:NZT 3 5階コモンスペース/小上がりのあるスペース。ハイチェア:ティーポ、ソファ:NZS、テーブル:NZT 4 3階スタジオ/ガラス張りのミーティングルーム。イス:ナビット、デスク:セリオNIC基準階平面計画(2)キャンパス内のNIC配置図(3)研究室と共用スペースとの接続類型図(1)CULTURAL SPACE QUEST 04

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