SCENE84
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 キャンパスマネジメントは、キャンパスや施設の総合的な戦略・企画・計画から実施・運用までを、一連の流れと捉えてマネジメントする仕組みです。キャンパスマスタープラン(以降CMP)が基盤となりますので、本大学は、1997年に第1回目のCMPを策定しました。その後、2004年に国立大学法人となったのを契機に、建物が古くなったら壊して新築するという整備から、無駄なものがないか検証しつつ効率化運営をするという方向へ舵を切りました。 私は2005年からキャンパスマネジメントに関わり始めましたが、その年に策定された第3回目のCMP2005には、いち早くファシリティマネジメントが導入されました。大学の総資産に占める土地・建物・設備等固定資産の割合は85%に及びますから、これらの経営資源を最小限の投資で最大の効果を生むような仕組みが重要で、これをファシリティマネジメントと呼んでいます。 ファシリティマネジメントの具体例として、2004年から始めた「スペースチャージ」があります。ES総合館やNICなど新築または全面改修をした総合棟から、建物面積の20%を全学共用スペースとして提供してもらい、それを使って研究したい学内グループに有料でスペース貸しをしています。 老朽化し耐震性能が劣る多くの建物の改修は、キャンパスマネジメントの大切な仕事のひとつです。本大学では2005年ごろから、建築学科の教員と相談して「アウトフレーム」という手法を採用してきました。この手法は建物のファサードに彫りの深い印象を与えるので、グリーンベルトに面した建物の耐震補強を「アウトフレーム」にしてデザイン統一をしました。 大学の組織は各部局や教員の独立性が高いので、キャンパスマネジメントの効果的な実施は難しいと言われています。本大学では教職員が一体となって取り組むために、大学本部に施設・環境推進室を、工学部に施設整備推進室を置き、施設管理部と協働体制を組んで進めています。そして、マネジメントの成果を、企業など一般の方々や他大学、官公庁を対象にセミナーなどを通して公開しており、全国の大学から参加があります。 こうした10年にわたるキャンパスマネジメントが評価されて、2015年日本建築学会賞(業績)を受賞しました。キャンパスマネジメントの基本は変わりませんが、教職員が協働して時代変化に伴う見直しを継続的に行い、新たな知的創造の場となるように努力をし続けていきたいと考えております。他大学に先駆けて、ファシリティマネジメントを導入包括的マネジメントと教職員の協働で、日本建築学会賞を受賞教職員が一体となって、キャンパスマネジメントの継承と創造を。-2015年 日本建築学会賞を受賞-名古屋大学 施設管理部 施設整備課長青木 浩史 氏Koji Aokiグリーンベルトと豊田講堂/2007年には大学のシンボルである講堂の全面改修およびシンポジオンと繋ぐ増築工事が、1960年の新築時と同様に、トヨタグループからの寄付と槇文彦氏の設計で完成した。教職協働による主要プロジェクトキャンパスマネジメントの概念CULTURAL SPACE QUEST 06

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