SCENE85
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 ヨーロッパでは、ドイツのハノーファーで世界最大の木工林業機械見本市「リグナ・ハノーファー」が1年おきに催されるなど、木材や木造への関心が高く、スペインでは世界最大の木造建築「メトロポールパラソル」が建設されました。3階建て以上の集合住宅も木造のものが建設されており、例えば写真の集合住宅は、CLT※と呼ばれる新しい木質材料で建設されています。もちろん、耐震性も検証された上での建設です。こうした集合住宅を目にすると、“木造の耐震性は弱い”という思い込みは間違いであることがはっきりします。 実はヨーロッパでは、木骨石造※の建築物が多く建てられてきました。全て木材で建てたくても、木は建築だけでなく薪というエネルギーにも使う貴重な材料でした。木材以外に石を組み合わせるなど、彼らは木材を適材適所で使うことに慣れていたのです。 日本では江戸時代に人口が増えて住宅の需要が伸びましたが、一部の寺社や屋敷以外は簡素な木造がほとんどでした。明治から昭和初期にかけて木造建築も発展しかけましたが、第二次世界大戦の影響を受けて、残念ながら時代に合ったモダン性の獲得にストップがかかってしまいました。しかし、1981年の新耐震基準の施行後、特に20年前の阪神・淡路大震災「木本来の材料力」を実社会に活かす。人類より遙かに長い歴史を持つ「木」は、生きている間は「樹木」伐採後は「木材」と呼ばれている。その特性や性能にはいまだ解明されていないことが数多くあり、生命農学の分野では、秘められた木の力を活かすために様々な研究が行われてきた。木の性能を科学的に究め調和のとれた木材利用に活かす研究や社会実現について、生命農学研究科の山崎真理子氏にうかがった。今回は連載の2回目である。「木」の力を研究し活かす名古屋大学大学院生命農学研究科 准教授山崎 真理子 氏Mariko Yamasakivol.2CLTを用いた木造集合住宅(ロンドン)世界で広がる木材ルネッサンス。「メトロポールパラソル」/地下に考古学博物館、地上階にショッピングセンターや広場等がある。15 CULTURAL FILE

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