SCENE85
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野口 計画にあたり、まずは、どこに建てたら大勢の方に来ていただけるか、どのような施設にすれば文化の発信基地になるかを考えました。郊外型という方法もあったのですが、東海市はコンパクトシティー構想を掲げていますから、市の玄関である名鉄太田川駅を中心に、再開発でまちづくりをすることにしました。その中の重要な施設のひとつが芸術劇場です。しかし駅前に単独で場所を確保するのは大変でしたから、複合施設になりました。安江 私は、施設作りではなく、“作ってからどう使うか”が重要であると考えています。東海市には、「ひとづくり」「まちづくり」「にぎわいづくり」という強いビジョンがあります。「にぎわいづくり」は分かりやすいので、市民の方に関心を持っていただけると思いますが、「ひとづくり」「まちづくり」はすぐにできるものではありません。また、ビジョンだけで実現の道筋がない施設作りは成功しないと考えています。私は日本中のホールや劇場を見てきましたが、上手くいっているところは多くないと感じました。でも実現の道筋がある場合は、専門家はそれに沿ってスキルを活かしていけると思っています。当面は、市と私のような民間の専門家が両輪となり、市民の方たちとも力を合わせて取り組んでいかなければなりません。江口 ずっと行政にいた私は、11万人都市に本格的なホールがなかったことが、気になっていました。これまで地元の市民団体の文化活動は、他市のホールを利用していたのです。今回は、再開発に関連してちょうどいいタイミングで計画が持ち上がり、気運も高まっていました。また、市のビジョンを専門家の方々にきちんと理解していただき、高いレベルの劇場を実現することができました。私の役割は、市長や教育長などとコミュニケーションをとって、市や専門家や市民の方たちがよりよく活動できるようにすることだと考えています。2015年10月にオープンした「東海市芸術劇場」は、商業施設や共同住宅が同居する複合施設「ユウナル東海」の1~5階に設けられている。この劇場は、中心市街地活性化事業の目標のひとつ「来街者の拡大」の役割とともに、文化芸術を愛する市民を育てる使命を持つ。大ホールや多目的ホールの他に、様々な広場、ライブラリー、スタジオ、練習室、楽屋などを備え、本格的なコンサートはもちろん、市民の多様な文化芸術活動に応えられる施設となっている。こうした劇場の考え方や設備そして活用について、東海市芸術劇場の館長・江口貴子氏、劇場芸術総監督・安江正也氏、管理課長・野口剛規氏にうかがった。市のビジョンを軸として、駅前につくられた本格的な劇場市民を惹きつける劇場が地域の文化芸術を創る。管理課長野口 剛規 氏Takenori Noguchi劇場芸術総監督安江 正也 氏Masaya Yasue東海市芸術劇場 館長江口 貴子 氏Takako EguchiCULTURAL SPACE QUEST 04

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