SCENE86
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 「なちゅら」が新設された背景として、まず、2007年の新潟県中越沖地震後に、耐震性や老朽化の面から旧市民会館の建て替えが必要になったことが挙げられます。次には、2015年に北陸新幹線・飯山駅ができて、市街地の構図が変わっていくことが予測されたからです。旧市民会館は、市の中心部で上杉謙信と武田信玄の合戦跡でもある城址山公園内に位置し、飯山線・北飯山駅の近くにありました。しかし、将来の市街地発展を想定して、新幹線・飯山駅の近くに新設することが決まりました。予定地の西側には、片山稲荷神社がある小高い丘や、市の美術館や図書館などが集まった文教施設ゾーンがあります。また、北側には雁木が連なる仏壇通りがあります。 2012年に行われたプロポーザルの要項を読んで、非日常的な劇場ホールが核となる施設ではなく、日常的に地域住民が利用できる文化的な交流の場が求められていると、私たちは解釈しました。そこで、「道が繋ぐ交流ぷらざ」をコンセプトに、街から続く道を引き込み、施設内で活動し交流して、また街へ出ていく路地空間として“ナカミチ”を提案しました。飯山市は豪雪地域で、冬季は歩く人の姿をあまり見かけず、移動は主に車です。しかし、市民のサークル活動は盛んなので市内の貸室の利用率は高く、そういった活動の場として、また中継地点としてナカミチを位置づけたいと考えました。ですから、ナカミチはホールの専用ホワイエとして閉じるのではなく、誰でも、様々な場所からアクセスできるオープンな空間作りをしています。新幹線駅前に建つ新たな市民会館は、市民が気軽に使える文化交流の場111設計室長寺川 奈穂子 氏Nahoko Terakawa隈研吾建築都市設計事務所設計室長川西 敦史 氏Atsushi Kawanishi1 飯山駅のホームからは、赤いコールテン鋼の外壁やナカミチに続く正面入口が見える。 2 ナカミチ/正面入口からナカミチを望む。左側は大ホールで、溜まる場には家具を配置。 3 移動観覧席を収納し、移動壁をオープンにするとナカミチへつながる。イベントなど平土間で使用する際の便宜を図っている。じょうしやまアクセス03 CULTURAL SPACE QUEST

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