SCENE86
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 現在は大・小の2つのホールがありますが、プロポーザル時には「いろいろな使い方ができる1つ以上のホール」が求められていました。大きなホールを利用規模に応じて使い分ける方法も考えられますが、ホールは観客がまばらだと演者さんが心苦しい思いをします。私たちは用途によって集客規模が大きく違うので1つでは対応しきれないと考えて、まったく性格の違う大・小2つのホールを提案しました。これらのホールは、デザインの上でも対照的で、お互いに引き立て合っています。 大ホールは、演劇、コンサート、講演会、そしてイベントにも対応できる多機能ホールです。展示会などの商業イベントにも利用したいという市の要望があったので、平土間にできるように移動観覧席を採用しました。演劇利用が多いと考えられましたので、デザインはブラックボックスをイメージし、カラマツの集成材をアクセントにしています。また、木は単なる仕上げ材ではなく、ホール機能を構成する重要な要素です。音響や照明機材を観客から隠しつつ、主に音響反射板として機能させ、キャットウォークを支える構成材にも使っています。 小ホールは、発表会や室内楽など市民の方が気軽に利用できるホールで、舞台裏からは自然光も入ります。ヒノキを小屋組※に、地元の伝統的な内山和紙を壁面に使って、明るく繊細なイメージを演出しました。これら無数のヒノキは音を拡散させ、各座席へ満遍なく音を伝える音響反射材としての機能もあります。また、ヒノキの角材を束ねて、キャットウォークを支える構成材としています。 多目的ルーム1は、「なちゅら」への南側の前庭からの入口に位置し、新幹線・飯山駅のプラットホームからも見られます。外部とナカミチに大きく開いて、利用者を迎え入れやすくしました。運動、会議、発表会のリハーサルからサークル活動まで気軽に使えるので、市民の予約が最も多いスペースです。 ナカミチの床は、来訪者を最初に外から受け入れる場所なので、親しみやすくするために “モルタルの洗い出し※”を採用して、地面の延長として土間のように仕上げています。1月のオープニングイベントを見に行きましたが、ナカミチでたくさんのイベントが行われていました。屋台や工作コーナーが並び、獅子舞や演奏会などのイベントが同時多発的に催され、通り抜け動線と溜まる場が効果的に使われていて良かったと思います。 賑やかなイベント以外に、親子の利用県産材を多く使った大・小ホールは、用途もデザインも対照的なスペースに市民の積極的な利用と参加で、飯山市にとけ込む「なちゅら」へ※小屋組:屋根部分の骨組みで、屋根荷重を支えながら軸組と一体になって外力に対抗する。※モルタルの洗い出し:モルタルに種石を混ぜ、固まる前に表面を洗い流して砂利を浮き出させる左官の工法。や地域の待ち合わせ場所など、日常的な場として活用していただき、飯山市に馴染む施設になってほしいと考えています。13205 CULTURAL SPACE QUEST

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