SCENE87
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 私は、廃校になった学校とその活用事例の実態を、全国の教育委員会を通して把握し、課題や取り組み傾向を検討し整理する仕事に携わりました。その中から、現地調査も行いながら「廃校リニューアル50選」を選定し、2003年に調査研究結果の報告書を提出しました。リニューアルの適切な活用事例がなかなか集まらず、50選となりましたが、その原因のひとつに、経済的な理由があるのではないかと思っています。児童・生徒数が減って廃校になると、若い世代がいなくなって労働人口が減少し、地域全体の経済力低下に繋がっていくからです。 実際に、廃校を再活用するには改装費や維持管理費が必要になります。学校として存続していれば、教育委員会の管轄下で文部科学省から地方交付税が付与され、それが維持管理費に充てられます。しかし廃校になると、地方自治体の首長部局に管轄が移って、維持管理費は自治体が負担することになります。施設規模が大きい学校は多額な維持管理費がかかるので、小さな自治体ではその財源確保が厳しいのが実情です。少子化による児童・生徒数の減少や平成の市町村合併などにより、公立小・中・高等学校の統廃合が全国で進められてきた。2014年5月時点で全国の廃校数は5,801校に上り、毎年400~500校発生している現状がある。この状況に対処するため、文部科学省の ~未来につなごう~ 「みんなの廃校」プロジェクト※など、廃校施設を活用して地域の活性化に繋げる取り組みが全国で進められている。それに先立ち、文部科学省が行った「廃校施設の実態及び有効活用等調査報告書」で委員を務めた情報環境学科の吉村彰氏にうかがい、2回連載で紹介する。どこでも起こりうる廃校。その再活用策は?廃校リニューアル廃校活用の可否を左右する、地方自治体の財政事情vol.1※「みんなの廃校」プロジェクト:廃校施設を有効活用するための文部科学省の事業。各地方公共団体における廃校施設の情報提供や活用ニーズとのマッチングを行う。廃校リニューアルの一例:京都芸術センター東京電機大学情報環境学部情報環境学科建築デザインコース 教授吉村 彰 氏Akira Yoshimura11 CULTURAL FILE

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