SCENE87
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 大ホール「ザ・グランドホール」は、音楽を主体としたパフォーミングアーツのための劇場で、コンベンションにも利用します。約1500席をコンパクトに収めるために、5層のバルコニー席としました。“舞台に近い客席が増えたこと”および“聞こえる音が豊かになったこと”の2つの成果が得られました。音響については、残響時間の長さがよく話題に出ますが、私は、舞台からの直接音が反射していろいろな種類の音が返ってくることが大事だと考えています。直接音にこの複雑な反射音が加わっていくことで、豊かな音が生まれるのです。 そのような音を得るために、ホールの壁や天井、舞台、そしてバルコニーの庇などについて、様々な工夫がなされました。2~4階バルコニーの壁際に立つアーチ形のパネルは、舞台に対する角度を少しずつ変えてあります。パネルの表面には大小の“木レンガ※”が積み木のように凹凸に貼られ、多様な音が返せるようになっています。そしてバルコニーの庇は、かたく重く浅くして、側壁全体が反射板として機能するようにしています。舞台についても、可動プロセニアム※の上部を15m以上に上げて完全に収納し、天井反射板を設置すれば、舞台と客席の天井が繋がり、客席と一体になった大空間が生まれます。さらに、その空間はラッパ形ではなく比較音響と臨場感を重視した、パーソナルチェアのあるザ・グランドホール5 上空連絡通路/2街区を繋ぐ2階(1部3階あり)通路からは、左右の街並みが見える。正面は大ホールホワイエ。 6 六角堂広場/上部の技術ギャラリーや可動バトンなど、ほぼ劇場並みの設備を備え、昇降式のステージも用意している。 7 レンガ積みファサード/建物内からは、このレンガ壁の裏側が見え、RCの仕上げ壁を濃青色にしてレンガと対比させている。 8 ザ・グランドホール ホワイエ/濃い赤色の木レンガとアーチ形の意匠がホール内と同調している。 15605 CULTURAL SPACE QUEST

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