SCENE87
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専用に買い取る”わけですから、1人ひとりの観客を包む“パーソナルチェア” としてデザインをしました。それから、お客様は後方から入って来られますので、後ろから見た印象が大事です。人を包み込むような背のデザインは、パーソナルチェアに最適なのです。張地の色は、壁の赤と対比させた伝統的な深緑色を選びました。お客様には好評で、私自身もよい座席に仕上がったと思っています。そして、ザ・グラ的ゆるい台形に設計されているので、舞台の音が適切な早さで広がり、反射音と混じったよい音を得ることができます。 内装は、“ホール空間を赤く染め上げよう”というイメージを持って進めました。赤は、人間が高揚する非日常的な色です。そして外壁のレンガの色にも合わせて、自然界に存在する赤色の中から選びました。また劇場では、座席はとても大事な役割を担っています。“ひとつの座席を自分9 木レンガ壁/木レンガ積みの小口が見える重厚感のある壁面。1 ザ・グランドホール/音楽を主目的に、オペラやミュージカルなどの演劇、会議や大会などのコンベンションにも対応。 2 アーチ形のパネル/木レンガの凹凸は陰影を与えるだけでなく、音を拡散させる役割も担う。 3.4 座席/座り心地に配慮してゆったりとした座席幅を確保し、背は厚みのある木材を曲げたホールド感のある形状にした。また、背の中央には縦にラインを埋め込んでいる。座の張地は高級感のあるモケット素材を選択。2978ンドホールにおける音の深さとクリアさを確認するために、10月に催されるウィーン・フィルハーモニーの公演を楽しみにしています。43※木レンガ:素材のテーマを外壁のレンガと連動させている。県産の杉材をレンガ色に染色して使用。※プロセニアム:舞台と客席の境界を示す舞台前面にある額縁状の枠。演劇などで使用する。ザ・グランドホール断面図(南側から見る)CULTURAL SPACE QUEST 06

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