SCENE88
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用者が集まるので交流スペースも必要です。広い廊下と教室の間の壁を取り払えば、大きなスペースが確保できます。また、建物の“減築”は、縮小社会へ向かうこれからの施設課題であり、思いきって必要な施設だけを残せば、耐震上も管理運営上も対処しやすくなります。■4まちづくり・村おこしの起爆剤にする 地域の再興には仕掛けづくりが必要であり、中でもプロモートしていく“仕掛け人”の存在が重要になります。地方を例に取ると、自然環境もよく地元産の食材も豊富ですから、その資源を使ってどう地域起こしをしていくのか、仕掛け人を中心にアイデアを練ることが大切だと思います。また、現代はネット社会ですから、仕掛け人は地域外の方でもいいのではないでしょうか。 廃校の適切なリニューアル例を紹介します。どの事例も、前述のポイントを押さえており、事業を成功させています。■「京都芸術センター」 京都府京都市 「元・明倫小学校」を、芸術振興施設としてリニューアル。廃校理由は都市化による人口減少です。1869年に開校し、1931年に大改築した建物の文化財としての価値を活かして改修され、造形・演劇・伝統芸能などに携わる若手芸術家の発表の場とし、また制作室も多数設けています。芸術文化に関心が高い市民の要望により、芸術家と市民の交流にも取り組んでいます。■「大子おやき学校」 茨城県大子町 「槙野地小学校」を、地元農産物を活用した体験交流施設としてリニューアル。廃校理由は過疎化による児童数減少で、仕掛け人は、前町長でした。1874年に開校した木造1階建ての雰囲気を活かして、郷土食の「おやき」の製造販売と体験教室を中心に、特産品の販売所や食堂を設けています。当初から住民を巻き込んで計画され、地域の積極的な協力で進められています。■「吉本興業東京オフィス」 東京都新宿区 「四谷第五小学校」を、企業オフィスとしてリニューアル。廃校理由は都市化による児童数減少です。1934年に開校したモダニズム建築の校舎を、黒板などを残してオフィス、スタジオ、スタッフ養成スクールなどに活用しています。“歌舞伎町を生まれ変わらせるプロジェクト”を進めていた新宿区が仕掛け人となって、エンターテインメントの企画製作会社を誘致することが決まり、吉本興業が選ばれたのです。条件は地域貢献をすることで、食育教育を子ども漫才で行う取り組みなどがテレビでも放映されました。 自然災害時の避難場所にもなる学校は、地域の利用価値が高い施設だと思います。廃校になる前に、“学校をどうしていきたいか”について地域で話し合い、アイデアを出し合う必要があります。第1回で紹介した盤渓小学校のように、生き残れば廃校にはなりません。リニューアルは今後も進められますが、私は、廃校を出さない努力も必要だと考えています。活用事例から学ぶ、これからの廃校リニューアルだいごニュイブランシュ KYOTO 2012KAC PAP Music 2015 常味祐司×秦進一「京都芸術センター」スタッフ養成授業教室打合せスペースパリ市との友好イベント。年に1回、町のあちこちで一晩中アートイベントを開催。「吉本興業東京オフィス」CULTURAL FILE 12

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