SCENE88
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学校と地域、そして小学校とこども園の連携を、同時に見つめ直すプロジェクト。 寺部小学校・寺部こども園が計画された背景には寺部地区の区画整理があって、小学校とこども園の移転・改築はその一環でした。宅地化が進んで児童数や園児数の増加が予想されることや、県道の拡幅で校地が狭まるなどの事情もあって移転が決まりました。そして、旧小学校および旧こども園とは別の敷地が用意され、幸いなことに工事による授業の支障もなく改築が行われました。 140年余の歴史を持つ寺部小学校の学区には祖父母から孫世代まで通った住民が多く、その歴史を継承しつつ新しい校舎をどうつくるかに関しては、地域から大きな期待が寄せられました。豊田市も、古いないでしょうか。ですから、地域と学校が連携的な関係を保つことが最適な方法であると思います。 現在は、学校づくりの計画段階から地域住民が参加して話し合う“ワークショップ”が行われます。寺部小学校・寺部こども園のワークショップでは、学校と地域の共働の可能性が検討され、「地域の歴史や知恵を学ぶ」「学校と地域が交流できる」「子どもたちの学びを支援する」「子どもたちの生活環境を維持する」という考え方に集約されていきました。 今回のプロジェクトの大きな課題は、合築における“小学校とこども園の関係性”でした。組織が違う上に、軸となる事業目的はそれぞれ教育と保育、そして預かる子どもたちの年齢層も異なります。施設計画としては、フェンスで分けることが歴史を持つ寺部地区を子育てしやすい新しい街として整備したいと考えていました。 豊田市が2010年から進めてきた「学校と地域の共働」プロジェクトは、教育の場であり身近な公共施設でもある学校を、地域の活動拠点として捉え直すことを目的にしています。 私は、“公立の学校には主がいない”ということを、大きな課題として考えてきました。子どもたちは6年間で卒業し、先生や市町担当者も数年で変わっていきます。実は、学校のことを一番よく知っているのは、地域住民や地域に住む学校卒業生なのです。例えば、学校づくりの課題のひとつ「安全」についても、学校に任せると監視カメラに頼ることになります。学校から監視される地域住民から見ると、何か腑に落ちないものを感じるのでは子どもたちが活きる、学校と地域の共働。豊田市立寺部小学校・寺部こども園TOYOTA MUNICIPAL TERABE ELEMENTARY SCHOOL & TERABE CHILDREN’S GARDEN所在地:愛知県 施主:豊田市監理:豊田市都市整備部建築住宅課設計:豊田市都市整備部建築住宅課、株式会社青島設計図書館家具設計・レイアウト・配架指導:平湯文夫区画整理や子ども数の増加などで、小学校とこども園を移転・改築へ地域をよく知る住民が、学校と共働で子どもたちの支援を組織の違いや立場の違いを超え、関係を見直して連携する名古屋市立大学大学院芸術工学研究科教授寺部小学校・寺部こども園建設委員会アドバイザー鈴木 賢一 氏Kenichi Suzuki寺部小学校・寺部こども園 北側からの外観07 NEW TREND

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