SCENE89
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1階 大ホールホワイエ/大ホールの利用がない時は、展示空間として利用できる。2階はホールを取り囲むように回廊が設置され、回廊型ギャラリーとして活用できる。※RM造:積み上げたコンクリートブロックを充填コンクリートと鉄筋によって補強した組積造。「躯体=仕上げ」であるため、素材のままで美しい内・外装となる。構造外皮のブロックが充填コンクリートの中性化を防ぎ、長寿命・高耐久性の建築を実現する。[左ページ上]外観全景/手前入り口のピロティ空間は、市民が気軽に参加できるイベントなどに活用。向かって左側にアクア文化ホールがある。[下]1階 エントランスロビー/市民がくつろぎ、交流できるとともに、展示やミニコンサートなどの催しにも対応。コンサート時は2階回廊型ギャラリーが、立見の観覧席となる。ベンチ:特注品 豊中市立文化芸術センターは、建築構造および施設設計においてもさまざまな特長を備えています。設計担当者様にその内容をうかがいました。集い、出会う空間構成により、人と人、人と文化芸術の距離を縮める。 今計画では、ホールだけでなく美術館などの展示機能を備えた文化芸術施設が求められました。それを踏まえ提案したのが、建物全体が美術館として利用できる平面計画です。行き止まりのない回遊性の高い動線で、エントランスロビーや廊下などを活用して日常的に展示が可能な回廊型ギャラリーとしています。 文化芸術はコミュニケーションであり、またコミュニケーションにより成熟するものであると考え、人が集まり、多くの発見や出会いを生む仕掛けづくりに注力しました。“空間の連続性”を意識した空間構成です。誰でも気軽に参加できるイベントが催されるピロティに始まり、その奥にカフェという公共性の高い空間、さらに展示やミニコンサートが行われるエントランスロビー、回廊型ギャラリーへ連続し、知らず知らずのうちに奥へと引き込まれ、文化芸術に参画するきっかけをつくっています。 また、通常、公共施設の階高は4~5mで計画することが多いのですが、今回、階高を3mに抑えています。階高を小さくすることで、他階の活動や展示物などを垣間見ることができ、人と人、人と芸術の距離を縮めることができるのです。永続性と居心地の良さを感じるRM造。工事規模としても世界初の試みに。 ヨーロッパの1000年を超える長寿建築の多くは、組積造と呼ばれる石積み建築です。今計画で構造体に採用したRM造※もまた、コンクリートブロックを積み上げた組積造であり、長い時間をかけて、いつまでもそこに生き続けていく永続性を醸し出します。 ブロックの表面には3種類のブラスト処理を施し、ざらざらとした表情をつけることで奥行きと温もりを与えます。また、一つ一つブロックを凸凹に積み上げることにより、光を受けると陰影が生まれます。そのため季節や時間帯で表情が変わり、建物の中でも時間の流れを感じられる居心地の良い空間となります。 階高は、3mで計画しているため、2層吹き抜けとなると天井高は6mです。この高さを成立させるために、今回ブロックの厚みを35.7cmとし、これまでの既製品にないサイズとなりました。また、建物全体で約5 万個のブロックを積み上げており、工事規模としても世界初の試みとなったのです。“空間の連続性”を意識した構成で、発見と出会いの場に。06

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