SCENE92
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多様なワークショップの成果を建築のプロセスに反映。愛知県新城市では、学校・家庭・地域のあらゆる人が、ふるさと新城の「三宝(自然・人・歴史文化)」を活かし、共に過ごし、共に学び、共に育つ、「共育(ともいく)」という教育理念を掲げています。子どもだけでなく大人も実践する共育は、地域のネットワークづくりや交流に貢献し、やりがい、生きがいのあるまちづくりにつながるものです。そんな共育の場として新城市作手地区に誕生したのが、「新城市立作手小学校」の新校舎と地域の活動拠点となる「つくで交流館」です。私たちが重視したのは、この施設の利用者である子どもや地域住民がどんな使い方や活動がしたいのか、その声を丁寧にすくい上げながらハードに落とし込んでいくプロセスでした。そのため基本計画から実施設計に至る各段階において、地域住民、教職員、児童を対象にしたワークショップ(以下、WS)を実施しました。地域住民と教職員のWSには互いの代表者が参加し合うことで、議論の共有に配慮し、さらに、コミュニティ支援やまちづくり、ソーシャルデザインを専門とするプロをオブザーバーとして迎えることで、新しい視点を提示しながら内容に厚みを持たせています。基本計画・基本設計では「学校設立準備会」と「総合整備委員会」という2つの組織が検討を進めていましたが、この内容にWSでの検討結果を付加しました。実施設計においても、対象が異なるWSをきめ細かく行い、教育学・建築学の有識者と協働して詳細を検討するWSや個別のヒアリングを実施しました。通常、基本設計までで終わることが多いWSを実施設計の段階まで広げたことで議論が深まり、利用者の皆さんとともに満足度の高い施設づくりを実現することができました。WSの内容は定期的にニュースレターとして全戸に配布し、参加していない方の当事者意識の醸成にもつなげています。株式会社東畑建築事務所執行役員 名古屋オフィス代表 瓦田 伸幸 氏Nobuyuki Kawarada株式会社東畑建築事務所設計室 主任技師久保 久志 氏Hisashi KuboSPACE QUEST 02TSUKUDE ELEMENTARY SCHOOL AND TSUKUDE KORYUKAN周囲の山並みになじむ外観デザイン。 写真提供:株式会社東畑建築事務所[左]地域対象のWS [右]子ども対象のWS写真提供:株式会社東畑建築事務所(左右共)平面図09

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