SCENE92
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棟ごとにテーマカラーの異なる案内サインを設置し、作手の昔話や動植物をモチーフにしたイラストで学年・部屋ごとに異なるサインを作成。今回のプロジェクトにあたり、私たちは学校と公共施設の合築事例をいくつか見学しました。多くは学校の中に公共施設が入っており、動線が交錯してセキュリティやプライバシーの点で問題があること、何より強制的に距離を近づけても交流が促進されるわけではないことに気付きました。そこで平面計画では、別棟とした小学校と交流館を「中庭」に面して向かい合わせ、それぞれが共有する室は中庭を囲むように設置することとしました。中庭を挟んで互いの活動が垣間見え、賑わいが伝わり合う適度な距離感こそ、合築のあり方の一つの“解”なのではないかと考えたのです。共有して使いたいときはオープンにし、個別利用の際はクローズにするなど、この中庭が緩衝帯となって各自で距離感を選択できるようにしています。これも、地域の方や子どもたちの活動内容、交流のあり方をWSで聞けたことがヒントとなりました。共育の拠点となるこの施設は、作手の新しいシンボルにもなります。誰もが気軽に立ち寄れて、居心地の良い、みんなの「家」となるような施設を心掛けました。外観デザインは、地元産スギ材で設えた壁や同じ勾配で統一した切妻屋根とすることで、作手の豊かな山並みになじむようにしました。また、軒の高さを揃えることで、複数棟に分かれている建物を一体感のあるものにしています。さらに、各教室には、家に入ってきてもらうような感覚で玄関を兼ねた「土間」を設けました。この土間は、日射熱を蓄積して放射し、外気から教室を守る役割もあり、夏は冷涼で昼夜の寒暖差が大きく、冬は寒さが厳しい作手の気候に対応するメリットがあります。その他、教室や廊下に設けた高窓による採光の確保とドラフト効果を利用した自然換気や、深い軒による日射のコントロールなど、環境に配慮したデザインを取り入れながら、室内環境の居心地の良さも追及しています。「中庭」が共育を促す、作手の新たなシンボル。ともいく[左]サロン(交流館)/休憩や学習スペースとして利用されている。イス:ソーハッピー、テーブル:DT-P [右]多目的会議室 (交流館)/イス:ルッシュ、テーブル:フリプト[左]教室土間(小学校)/玄関代わりの「土間」を設けることで、教室から直接グラウンドに行くことができる。[右]教室(小学校)/教室は中庭から離して配置することで、落ち着いた学習環境を確保。高窓が採光性を高め、ドラフト換気を促す。 写真提供:株式会社東畑建築事務所(左右共)10

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