SCENE99
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株式会社類設計室ディレクター喜田 育樹 氏Kida Naruki株式会社類設計室企画室キャップ橋本 宏 氏Hashimoto Hiroshi株式会社類設計室計画設計サブキャップ網野 琢馬 氏Amino Takuma右から喜田氏、橋本氏、網野氏。「脱・教育」で新しい教育の潮流を起こすパイオニアにこれほど社会が激変する時代にあって、日本の教育の本質は明治以来ほとんど変化していません。それは教師・学校主体による一方的な知識供給型の教育といえます。本プロジェクトの最大の特徴は、追手門学院の教職員の皆さまと設計者が1年以上をかけ、全国各地の事例視察や海外の先進事例を共有しながら、今の日本の教育を革新する新たな学びとその空間のあり方を追究した点にあります。調査・分析の結果、30年、40年後の教育とは、教室もクラスもカリキュラムといった教育を構成する「枠」はなくなり、生徒が好奇心、探求心を発揮しながら主体的に学ぶというものでした。これを踏まえ、新校舎「スマートパレット」のコンセプトとしたのが、校舎全てを学び場とする「学習環境一体型」であり、その最大の特長が「脱・教室」「脱・廊下」です。教室、廊下といった概念を取り払い、体育館のような一つの空間を学習形態に応じて自在に変化させるラーニングスペース「Canal(カナル)」を構成。可動式の机・イスの選択にあたっては、軽量であることを基本に機能性とスタイリッシュなデザインを重視。いくつものメーカーの製品を実際に使用して決めました。また、Canalとともに特徴的なのが、「脱・図書室」のもと、各フロア中心部に図書や映像機器を設置した「Port(ポート)」です。Canalと Port が有機的につながることで、「いつでもどこでも」学びの場となる新校舎が実現しました。生徒の学びにすぐ対応できるPortにより、図書の貸し出しが1.5倍に増加したそうです。図書室という枠を取り払ったことで、生徒の好奇心、ワクワク感を喚起したのではないでしょうか。Portには「Teacher Station」を設けました。新しい教育において教師は知識を供給する主体ではなく、生徒の主体的な学びを支援するコーディネーターであり、ファシリテーターとして機能します。テラスのような開放的な空間が積層する外観デザインも、当初から意図したものではなく、 閉じた「箱」や「均質さ」を否定した結果生まれたものです。新しい教育を創造するスマートパレットによって、追手門学院様が日本の教育にパラダイムシフトを起こすパイオニアとなることを信じています。[左]3階 PortS/書架:造作家具 [中]多目的ホール前/シューズロッカー [右]メインホール エントランス/展示棚:造作家具06

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