SCENE99
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株式会社昭和設計建築設計部寒野 誠規 氏Kanno Masanori「未来型学習の拠点」として「プレイフル」な学びの空間を創出本プロジェクトにあたり、弊社が提案した設計のキーワードが「未来型学習拠点」というものでした。念頭にあったのは「プレイフル・ラーニング」という概念です。「プレイフル」とはワクワク・ドキドキする心の状態であり、それは知識を発信する授業形態だけでなく、仲間との協働体験を通した学びや、プレゼンテーションなど相手に認めてもらうために深められる学び、多様な人や価値観と交じり合う中から得られる学びなど、特徴的な学びの風景から得られるものです。子どもたちの心をプレイフルにする学びこそ、新棟で実践されるべき未来の学びだと考えました。そして、その仕掛け(構造)となるのが、地上3階の2階と3階を「半階層」ずらして中間層を作る「スキップフロア」です。アクティブラーニングを実践する2階の「アクティブスペース」と、中2階の図書室に相当する「ライブラリースペース」は、 緩やかな階段でつながることで2つの空間の連続性を確保しながら、階段というやわらかな「仕切り」によって変化をつけることができます。フロアには大人数の授業に使えるフリースペースや、グループでホワイトボードを使って自主的な学びができる小さなスペースを設け、「仕切り」となる階段もプレゼンテーションに利用できるなど、多様な学びの空間が、こどもたちや先生方の発想で生まれます。また、「未来型学習」の必須条件ともいえる「ICT環境」は全館で整備し、書籍とタブレットの双方を使って調べ学習やグループワークを展開。大型スクリーンを設置した「フューチャーラボ」では、映像のほか関連資料を表示してプレゼンテーションなどに活用。2階と3階のフロア入り口には、子どもたちの学習への興味を引く展示が可能な「メディアコーナー」を設け、仲間とコミュニケーションをとったり、ホワイトボードを使って自主的な学びを深める場としています。2020年度に施行される新学習指導要領では、アクティブラーニングを「深い学び」と表現していますが、「プレイフルラーニング」こそ小学生の深い学びの本質であり、「メディアラボ」と名付けられたこの新東館が、プレイフルな学びを提供する空間となることを願っております。[左]2階 大階段/ライブラリースペースとアクティブスペースをつなぐ階段も、読書やコミュニケーションの場。クッション [右]3階 フューチャーラボ/タブレット付イス、教卓、タブレット収納庫 〈Photo(左・右):MATSUMURA Yoshiharu〉08

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