SCENE別冊「コモンスペース特集」
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 早稲田大学には、軽井沢・松代・菅平・伊豆川奈・鴨川と五つのセミナーハウスがあり、主にゼミ合宿や新入生のオリエンテーションで利用されています。その中でも、1964年に開設された軽井沢セミナーハウスは、老朽化が進み、耐震補強も必要だったこと、そしてゼミ室の不足など施設的に課題もあったことから、今回の建て替えとなりました。 軽井沢はセミナーハウスの中でも収容人数が340名程度と最も大きく、「早稲田の学生なら、一度は必ず利用する」と言える主要施設です。今回の建て替えでは5号棟まであった旧施設を、宿泊機能が中心の82号館(A棟)、食堂や浴室、ゼミ室などがそろった82-2号館(B棟)の二つに集約しました。利用形態も、一学科の新入生全員が参加する大人数のガイダンスだったり、数人という小グループのゼミ合宿だったりと、使う人数も目的も実に多様です。そこでさまざまな利用目的にフィットするよう、今回は“多様性”を意識して設計をしました。2182号館(A棟)1 1階 ラウンジ/イス、テーブル 2 2階 デッキ/ベンチ:特注品82-2号館(B棟)3 1階 食堂/イス、テーブル:DT-30 4 2階 ゼミ室/イス:ティーポ、テーブル:セリオ 5 2階 ゼミ室前のラウンジ/廊下から一段下がっており、ゼミ使用時の休憩や少人数でのミーティングなど多様に使える。ベンチ:特注品、トラッシュカウンター:特注品重視したのは、さまざまな利用目的にフィットすること軽井沢の気候と立地を生かした、快適な施設早稲田大学キャンパス企画部企画・建設課長北野 寧彦 氏Yasuhiko Kitano 今回の建て替えにあたり、各棟で意識したのはやはりバリアフリーであることです。しかしこのセミナーハウスには両棟とも、エレベーターが設置されていません。そこで、緩やかな傾斜地となっている敷地の高低差を利用し、車椅子が利用できるスロープを設置しました。室内は全体的にモノトーンの家具で統一しており、一見寂しいように思えるかもしれませんが、人が入って使われ始めたときのことを考えると、この方がまとまりがいいと思っています。 また、今回は食堂以外の施設に冷房を入れておらず、自然換気を重視した設計としています。どちらの棟も傾斜地の上側となる建物の北面と、斜面下側となる南面に換気用の窓を設けており、風が通り抜けやすい空間となっています。南面は屋根を長く伸ばして庇とし、夏の日13 COMMON SPACE

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