SCENE別冊「コモンスペース特集」
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12 20周年事業について学内コンペティションが実施され、“学生が使える新しい建築物” を中庭に作ることになりました。中庭は、4mの高低差があるうえ段差や雑木林が残り、今まで利用されていませんでした。しかし、回廊で繋がる既存校舎のどこからでも見える位置にあるので、ここを“新しい学びの拠点”と決めたのです。 新しい学びとは、通常の授業では引き出しにくい学生の可能性を伸ばすために、学生や教員たちが共に学び活動をしながら教え合うことだと考えます。特に、学生たちが集まる食堂以外の居場所とリテラシーを磨く場所を重視して、言語・情報・ものづくりの3つの場と、企画や作品などをプレゼンテーションする場に、バス待合も加えた5セクションを設けることにしました。 施設計画の手がかりは「バス待合」です。バスから降りた学生たちがこの施設を通って各自の教室へ向かい、終わったら、またここからバスに乗って帰るという学舎の出入口を想定しました。建築については、当大学の非常勤講師でもある栗原先生と岩月先生に設計をお願いし、5つのセクションを分散させ通路でつないでいく拡がりのある案で建設されました。中で行われていることの可視化をねらい、ガラス壁を多用しています。私は“他者や背景に思いを広げること”が教育にとって大事だと常々考えています。授業の行き帰りに、他の学生がしていることを見て心が動き、活動に加わるなど次の行動へつながることがあるかもしれません。 「ものづくりラボ」には、“デジタルものづくり”の時代にふさわしい機器が備えられ、学生たちが協力してものづくりをすることを目指しています。それが学内企業づくりに発展すれば、インターンシップでは体験できないリテラシーが身につくのではないでしょうか。 家具については、教員から出たさまざまなアイデアをもとに検討がなされ、最終的には私が決めました。「バス待合」は学生を迎えてくれる明快でくつろげる家具、「言語ラボ」は落ち着いた雰囲気の木製家具、「情報ラボ」や「ものづくりラボ」はモノトーンで使い勝手のよい家具を。建物全体はモノトーンの静かな建築ですから、活発さをプラスするために、「プレゼンテーションルーム」には目を引くようなオレンジ系の可動イスを配置しました。 学生を中心に、自発的な参加でセンターの管理・運営組織を作り、教員がバックアップをしています。例えば、センターはエアコン完備ですが、丘の上にあって風がよく通るので、エアコン無しでも過ごせる方法をみんなで考えようと思っています。カーテンやブラインドといった当たり前の方法ではなく、さまざまな視点から考えて解決していかなければ、新たな何かは生まれません。 今後は、大学祭など学生のさまざまなイベントに活用したいですね。地域の方たちを招いたり、教員の研究発表や授業外レクチャーなどにも使ってほしいと思います。大事なことは、センターを使った活動が継続され実績を積み上げていくことだと考えています。キャンパスの中庭を活用した、新しい学びの拠点学舎への行き来に出会う、お互いが刺激し会える空間時代に合う学びと活動を支える、機能的な環境づくり学生が自ら参加し考えることで、新たな活動が生まれる17 COMMON SPACE

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