SCENE104
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10[左上]1階 ゲストルーム/イス:LSPA、テーブル:NZ-LA、ソファ [右上]地下1階 特別室/イス、テーブル:GMT[左下]地下1階 控室B/イス:ティーポ、テーブル:CTZ [下右]地下1階 控室A/ソファ、テーブルさらに、特注LED照明器具を屋根に常設し、緑青色の大屋根とともに日本武道館のシンボル「擬宝珠(ぎぼし)」が金色に輝くライトアップを実現。これを手掛けた照明デザイナーの石井幹子氏によると「満月の清らかな灯に照らされた富士山の情景をイメージした」とのこと。次代に受け継がれるランドマークにふさわしい “レガシー化”の一助となるはずです。そして、3点目の“バリアフリー化”ですが、これが最も大きな課題となりました。大道場は1階玄関から入るとすぐ観客席があり、車いすでもそのまま入場できる構造となっていますが、1階の東西南北4つの玄関入り口と北西・南西の大階段前が従来は凹凸がある石畳だったため、車いすの通行が困難な状況でした。そこで石畳をフラット化するとともに、西正面玄関に加えて中道場西入り口にスロープを設け、車いす利用者が安全かつスムーズに移動できるようにしました。また、事務棟玄関・中道場棟玄関までに視覚障がい者点字ブロックを設置し、階段の手摺部分にも点字サインを設けています。従来、日本武道館には車いす用の席はなく、車いす利用者が来館する都度、一般客席を取り外して車いすスペースを確保していました。今回の改修では車いす用観客席を常設するため、設計段階から障害のある人の権利の保護と社会参加の機会平等を目的に活動している団体からヒアリングを実施。これに基づき1階南東・南西・南の3辺に車いすスペース(同伴者席付)を30席常設しました。さらに、前列の観客が立ち上っても視線が遮られないよう、サイトラインの確保にも取り組み、席を少し前に張り出させるよう車いすスペースの位置を設計しています。また、従来1階及び地下2階に各1ヵ所ずつしかなかった車いす用のトイレも増設し、けが人、ジェンダーフリーの方や介助者も一緒に入れるなど、幅広い利用者への対応を可能にしています。東京オリンピック・パラリンピック競技大会の会場として実施した「令和の増改修」ですが、それに限れば1度だけのイベント利用にすぎません。創建の経緯自体がレガシーといっても過言ではない日本武道館が、この先数十年を経てなお日本武道の殿堂であり、音楽の聖地であり続けるための増改修と位置付けています。さらには、新型コロナウイルスという脅威に直面する今こそ、生まれ変わった日本武道館が、アフターコロナへの希望を託すランドマークとなり、未来のスポーツ、文化を世界に発信するグローバルな拠点となることを強く念じるものです。日本武道館所在地:東京都施主:公益財団法人日本武道館設計:株式会社山田守建築事務所

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