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COLUMN コラム

2021.01.29

女性の働き方をデザインする
ー 前編 ー(全2回)
インテリアデザイナー
イガラシデザインスタジオ代表/武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科教授

五十嵐 久枝 氏

現在、労働人口の約45%は女性が占め、25歳から54歳までの女性就業率も70%に近づくなど、かつて男性中心だった職場に女性が参画するようになり、「働く」ということを再考するタイミングがきています。それは、効率を求めて働き、働く質を高めることでやりがいを感じ、豊かな働き方へのシフトに見られます。労働時間はライフシーンの多くを占めており、企業における「働き方」は雇用にも影響を及ぼすことから、オフィス環境は大きな変化の時期を迎えています。今回は働く女性の空間に焦点を当て、最近のデザインから「Peach John東京オフィス」を紹介します。

オフィス移転を機に、リニューアル

Peach JohnはEコマースを中心としたインナーウェアメーカーです。社員の約95%が女性であることから、経営陣による働き方改革とともに、女性を中心としたオフィス作りが求められ、本社オフィスの移転を機に、リニューアルとなりました。オフィスデザインにはファッションリーダー的な感性と普遍的なデザインの併存が必要となるとともに、働く人がどれだけ快適に過ごせるか、質の高いコミュニケーションができるか、そして、社員のモチベーションを上げる環境を作り出すことができるかが、大切なテーマとなりました。
同社はかねてよりフレックス出社や産休、育休制度など、子育てをする女性を中心に据えた働き方を実践しており、さらに今回は働き方をシフトさせる試みをしています。大きな軸は、固定席をなくしフリーアドレスとすること。フリーアドレスは毎日の席が変わるために部を超えたコミュニケーション力を発揮することも促します。また、物の滞留をなくすことで、余剰空間を有効活用することも期待できました。オフィスの移転に際しては立地場所の選定からプランや家具について社内シンキングチームと人・モノとの関係や、働き方について話し合い、プラン構築を行ないました。

空間の無駄を省き、整理する

原宿にあった旧オフィスが3フロア構成であったのを、外苑前に移転する新オフィスは2フロアに集約するのが、リニューアルにおける与件でした。旧オフィスには、ブランドを築き上げた長年の足跡として、多くのサンプルや資料が蓄積されていましたが、オフィス移転を機に状況を分析し、保存されていた資料やサンプルの大整理を行うことを計画、移転後の総面積が小さくなっても、空間の無駄を省き、整理することで、効率的な空間になることを目指しました。
また、オフィス空間での用途別面積を割り出したところ、会社の拡大とともに増設された空間とそれをつなぐ通路空間も多く、各部署のストックも大きな面積をしめていました。このことから各スタッフへ割り当てられたデスクも、効率化できると感じました。
再構築するインテリアプランニングでは、物のストックで分断されていた壁と廊下をなくし、フリーアドレスを導入。これにより部署間の壁や固定席を極力少なくし、省スペース化を図ることで、余剰空間をワークスペースに還元しました。点在していたストックは見える化した倉庫に集約。これによりワークスペースの面積は以前よりも30%多く確保できました。

インテリアデザイナー
イガラシデザインスタジオ代表
武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科教授
五十嵐 久枝
Igarashi Hisae

桑沢デザイン研究所インテリア・住宅研究科卒業。1986~91年クラマタデザイン事務所勤務。93年イガラシデザインスタジオ設立。幅広い領域で空間デザイン・インスタレーション・家具デザインに携わる。主な仕事に、TSUMORI CHISATO、武蔵野美術大学「ゼロスペース」、PEACH JOHN東京オフィスのインテリアデザイン、TANGO、baguette life、AWASE、AS YOU AREの家具デザインがある。